「岐阜編」第10話 我がカカシの名は
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れてMacを購入するも
YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、
「もっとITを駆使している感を醸し出したい」と感じていた。
(http://photozou.jp/photo/show/216087/86050518)
そこで、有名IT企業に勤める旧友・二嶋とともに、
旅先の観光資源をただ愉しむよりも、
自らがIT感を醸し出すコトを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
第2回キカクの「かかしコンテスト」編はいよいよ後半戦。
事前検討を経て恵那に集合した我々は、
設計の最終確認、材料の買い出しを済ませ
カカシ組み上げ・提出の日を迎えるのである。
【カカシ編 5〜9話はこちら】
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ここが新しい物語の舞台だ。
「時は来た」
そんな言葉が似合う朝だ。
(http://bokete.jp/odai/638222)
6月から始まったこのキカクが実りをなす日。
支度を終えた我々は、意気揚々と宿を出る。
(http://onsenoyazi.blog81.fc2.com/blog-entry-323.html)
しかし、こういう時ほど神様のいたずらは起きるもの。
(http://soratopapa.blog.jp/archives/54224675.html)
雨である。
恵那駅に戻ると、小雨がぽつぽつと降り始めていた。
困った。
これではカカシを作っている間に風邪を引いてしまう。
(http://rocketnews24.com/2014/02/03/409165/)
”風邪”
IT感とはかけ離れている、完全にNGだ。
しかし。
恵那には「IT感のあるカカシを作りたいのに雨が降っている」
という問題を解決する場所があることを我々は覚えていた。
それは、バローから歩いて1分ほどにある。
“中山道大井宿広場”
長いので「アトリエ」と呼ぶことにした。
アトリエの魅力は枚挙に遑がない。
・快適な広々スペース
・トイレ完備
・駅から徒歩3分
・屋根付きバルコニー的な何か
究極の物件である。
幸い、屋根付きバルコニー的な何かには人っ子一人居なかった。
チャンス到来だ。
我々はそそくさと材料を取り出す。
※カカシレシピの一部
雨が勢いを強める中、ついに作業は始まった。
基盤作りを二嶋が、
装飾作りを私が行う。
打ち合わせを重ねたのが功奏し
順調にカカシが組み上がっていく中、
私はいくつかのことを思い出していた。
(http://girlschannel.net/topics/360450/)
あれは夏の日。
ーーー“IT感のあるカカシですか?笑”
“過去大会の結果通り、カカシの原形を残すこと。
アイデンティティを活かすこと。”
“…つまり、カカシらしさを最大限に出さないと
冗談抜きで優勝は厳しいと思いますよ”
ーーー“カカシを作るの?なんで?笑”
“IT感っていうけど、未来のカカシが
どんな風に畑を守るのかイメージしてみようよ”
2人が我々にくれたアドバイスは、
きわめて相容れないものだった。
1人になって考えてみたとき、
アドバイスを全て昇華しうるデザイン設計は見えなかった。
夜も眠れなかった。
低反発枕を濡らす日もあった。
カカシのアイデンティティと、ITを駆使している感。
カカシらしさと人らしさ。
この塩梅を少しでも間違えれば、
我々の目指すカカシではなくなってしまう。
(Amazon.co.jp: オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部): 伊坂 幸太郎: 本)
そういえば、
伊坂幸太郎の作品「オーデュボンの祈り」には
“優午”という名のカカシがいた。
優午は、未来を見ることが出来た。
心優しく、強くもあり脆くもある、
作中でもっとも人間らしい存在だった。
しかしある日、優午は何者かに殺される。
彼を恨み、疎ましく思う者が居たのだ。
そんな“人らしさ”に優午は殺され、
二度と口を開けなくなってしまった。
実際のところ、カカシが言葉を発することはない。
もしあったら、それは多分カカシではない。
(http://real.tsite.jp/shonan/event/2014/12/pepper-kenkou-concierge.html)
ペッパーくん的な何かだ。
“カカシらしさ”という言葉の固い結び目はやがて、
次第に易しいものへと形を変えてゆく。
カカシに感情はあるか。
カカシは自らの意思で動くのか。
「IT感のあるカカシは何をするのか」
我々の辿り着いた答えはこうだった。
(http://vocaloidlyrics.wikia.com/wiki/アンサー_(Answer))
①カカシ自体を機械的にしてはいけない。
あくまで、カカシ。
②そのカカシの使命に、我々人間がITを付与することで
(http://isc.iwasaki.ac.jp/courses_t/it_system.html)
カカシは、遥か昔より続く役割を効率的に果たす。
カカシが、ではなく
カカシで、守る。
ーーー雨はまた勢いを強める。
完成の瞬間は着々と近づき、
いよいよ残すは1パーツのみとなった。
しかし、
ここでひとつのトラブルが起きる。
「あかん、カカシのニット帽を宿に忘れた」
「なんやて」
(http://matome.naver.jp/odai/2138354315015471501)
ニット帽:ITを駆使している感を醸し出す重要なグッズ。
ニット帽なしにこのカカシの完成はない。
運が悪いことに、日々IT感を醸し出したい我々は
ニット帽をかぶっていなかった。
これだからダメなんだ。
「どこかで買うしかないな」
「…あ」
一目散に駆け出し、アトリエを出る二嶋。
そう。
こんな状況でも助けてくれる場所が、恵那にはある。
(http://toyopos.seesaa.net/article/387237590.html)
ご存知、バローである。
二嶋はニット帽を買ってきた。
ちゃっかり傘を購入していた。
嬉しそうだった。
我々はそのニット帽をかぶせ、頭を装着すると
いよいよカカシは最終形の全容を現した。
バローの近くで生まれ。
バローの材料で作られ。
そしていつかの未来で、恵那の人々を助ける存在になる。
IT感のある祈りを込めて、
お前をこう名付けよう。
「バロ助」と。
ーーー時は2040年。
(http://iro1616.blog134.fc2.com/blog-entry-15.html)
多くの物議を醸したTPP締結も今は昔。
農業を生業にする人々には、ちょっと心強い味方がいる。
カカシだ。
※発明当時の写真。発起人の1人・大久保氏(左)と
ITカカシ1号機・バロ助(右)が楽しげに談笑している。
いつも畑に目を光らせている、鋭い奴。
かつて、東京オリンピックに向け一大ブームとなった
”インバウンドビジネス”も下火を迎えた中、
(http://college.nikkei.co.jp/article/40054917.html)
日本伝統の農業を永劫変わらぬ文化として守るため
政府が多額の投資を行なったことで、
作物荒らし対策のBPOビジネスは飛躍的に伸長したのだ。
(http://ono-blog.com/press-401-5737.html)
カカシらしい外見だが、目を光らせているのは
KTS(カカシ追跡システム)のオペレーター陣営。
(applied consulting, inc. » コールセンターコンサルティング)
アイトラッキングの実験・テストを重ねることで
野鳥・害虫の行動データベースを徹底分析し、
(https://www.kickstarter.com/projects/fove/fove-the-worlds-first-eye-tracking-virtual-reality)
カカシの目線の動きやタイピングといった
アクションを最小限に効率化している。
つまり、実際に畑を守るのは意思なきカカシで
そのミッションを支援するのが人間、という配置だ。
頑張っているカカシを見守る人々が、
カカシの気持ちを代弁してくれる。
ツイッターが廃れた後、
人々は誰かの気持ちになって
”文字を書く”ことを思い出したのだ。
ちなみに、仕事中に聴いているのは
「クラブ・トランス系 作業用BGM【2028年 懐メロ】」だ。
お、こんな時間に害鳥の群れが現れた。
付近のエリアにいる同胞に報告しないと。
ーーーこんな未来もきっと創造出来る。
ーーーそう、iPhoneならね。
戯れ言はさておき、我々は記念写真を撮った。
カカシは出来上がった。
あとは提出するだけだ。
達成感に満ちた、静かな昼下がり。
アトリエの水たまりには、水滴が弾み続ける。
しかし、このカカシを運ばねば。
次回、カカシ本編、怒濤の完結。
(第10話 終わり)
ーーーー☆過去記事一覧☆ーーーー
【あけてつあるけ編】
○第1話 「新シリーズ・岐阜編」第1回 始まりの日 - Himagine
○第2話 「新シリーズ・岐阜編」第2話 ”キカクがない!?” - Himagine
○第3話 「新シリーズ・岐阜編」第3話 vs明知鉄道 - Himagine
○第4話 「新シリーズ・岐阜編」第4話 あけてつの真相 - Himagine
【カカシコンテスト編】
○第5話 「岐阜編」第5話 IT感のあるカカシ - Himagine
○第6話 「岐阜編」第6話 本当にカカシをIT化できるの? - Himagine
○第7話 「岐阜編」第7話 どんなカカシを作ろう - Himagine
○第9話 「岐阜編」 第9話 カカシ革命の前夜 - Himagine
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