IKEAでやたらトリック考える先輩
明日があるさ 明日がある。
デカすぎて部屋の中にある。
わたしはこれから、2つの壁を乗り越えなければならない。
1つは、どうやって現場まで「明日」を運ぶか。
もう1つは、いかにして友人Aに悟られず、現場で「明日」を動かすか。
◆前回までのあらすじ
社会人6年目を迎えた私は、今後の人生で「一生続けられる趣味」を真剣に探した結果、とある友人A(通称:A)へ、ことあるごとにレゴを贈り続ける企画 「レゴシティ編」を立ち上げた。
【イメージ】
▼詳細はコチラから
stepfatherena15.hatenablog.com
レゴを運ぶレゴ・通称「明日」は無事完成したが、トラブルも発生した。明日が大きすぎてカバンに入らず、外へ持ち運べないのだ。まだ第1回なのに、レゴシティ計画は暗礁に乗り上げた。
【イメージ】
途方に暮れていた。(これ以上に暮れようがないレベル)
「一生続ける趣味」として、Aへレゴを贈るために行った準備は、明日のオーバーサイズ問題ですべて水泡に帰した。おばあさんとコンタクトをとり、早急に対策を検討する。
「いや作るときに気づけよ」
「くそデカいだろあれ」
◆明日の購入にあたり、半額出してくれた
「17,000円返せよ」
「マジで」
「明日を持ち運ぶには」
「カバンが必要だ」
「 」
「いや、さすがに出さねーよ?」
「そんなトーンで言うけどお前あれよな」
「発想が弱き者」
「いや、そういう話じゃなくて」
「大きなかばんを知らないか?」
「思い当たる節がある」
「おお」
長寿の知恵があった。
「しかし」
「もう1つの壁を突破する必要がある」
「でた金●一少年!」
「タロット山荘殺人事件」
「知らんけど」
「タロット山荘に関しては」
【実際のトリックはコチラから!】
「明日を現場まで運んだところでさ」
「どうやって」
「Aのもとへ」
「動かすのさ」
「トリックってこと?」
「バレないようにやらないと、興ざめでしょ」
「目の前でお前がレゴにレゴ乗っけてたら」
「滑稽だな」
「そうなのよ」
「現状を整理すると以下の通り」
「”場所”のせいで曖昧なのか」
「かばんについて議論する前に、そもそも現場へ明日を運ぶ必要があるのかを考えないと」
「明日の発動方法を決めてから、かばんの要否を判断すれば良いと」
「逆にAを自宅へ動かしてしまえば、明日を連れ出す必要はない」
「その通り」
「つまり」
「まずは明日を運ばない場合のシミュレーションをすべきだね」
< 翌日 >
早速シミュレーションを行うことにした。舞台はIKEA。
数多の検証ステージ(家具付きショールーム)を擁するお店だ。
(引用:https://www.enjoytokyo.jp/shopping/spot/l_00012140/)
テレビ番組「SASUKE」で言うと、
山田勝己の家の庭のようなモノ。
(引用:https://blog.excite.co.jp/porsche/10631850/)
意気揚々と2Fのショールームエリアへ進むと、わたしたちは“Aに悟られず明日を発動する方法”を考えることにした。
【1st STAGE】
「これめちゃ難しいじゃん」
「素人だしな」
「新しい趣味にふさわしい」
怪訝な表情を浮かべながらも、ペンは走り出す。
※これは、正真正銘の「デザイナーがなす業」
「仕掛けのアイデア出しでいいよね?」
「何かの現場じゃん」
「ていうか」
「明日とつながっている物体は何だ」
「重石」
「んおもし」
「部屋にないものは使えないことにしよ」
「床に突っ伏しているガイシャは誰」
「被害者な」
「これやると雪平警部補が来てしまうのよ」
(引用:https://maidigitv.jp/article/16555e94bea74e71.html)
もはや今回のAはガイシャなのかもしれない。
とにかく考えが甘かった。このやり方は”絵に描いた餅”である上に、序盤から雪平警部補が出てきてしまうのだ。
【2nd STAGE】
2段に陳列されたソファたち。
この奇妙な群れを眺める私を、おばあさんが制する。
「これは部屋のレイアウトじゃないぞう」
「あえて」
「ソファが上昇している?」
「Aを乗せたソファがライズアップする」
「その坂を駆け上がり、レゴを届ける明日」
「なんでライズアップすんの」
「いや」
「スケール感を出したいなと」
「なんでライズアップすんの」
「ライズアップしないじゃん」
「うん、しない」
【3rd STAGE】
ここで我々はようやく現実的なアプローチを見つけた。
「ここはシンプルな部屋だから」
「再現性のある方法が検討できそうだ」
「こういうことか」
「ハンモックを駆ける明日」
「かっこいいだろ」
「しかもこのイラスト」
「Aが狼狽する様子も再現されている」
「神が細部に宿った事例」
「てかAの反射神経やばいな」
「ハンモックからいきなりレゴが突っ込んできたら」
「受け止められるか?」
「Aは昔アイスホッケーやっていたらしい」
「ホッケー万能説?」
(引用:https://teiichi.jp/pride-douga/)
【4th STAGE】
私は机の上に並んだ雑貨を一瞥し、一計を案じた。
これがのちの一瞥一計である。
3rd STAGE(ハンモック)の結果を踏まえて、受け取りやすさも考慮。
「カゴに入ったな」
「もはや」
「動くレゴを使う必要性がない」
「そしてケージじゃねーよ」
「これ、モノマネで『あのね、芦田愛菜だよ!』って言うのと同罪だから」
おばあさんは、案出しにシビアだ。その理由は明らかで、「明日が割り勘だったから(17,000円/人)」に他ならない。
明日が「一生続けられる趣味」シリーズでデビュー出来なければ、ただのお金の無駄。しかも廊下に置いておくとクソ邪魔。擬人化するなら間違いなく、ちっちゃな頃から悪ガキで、15で不良と呼ばれるレベル。そのくせお値段は立派な温泉旅館で一泊二食付きプランを楽しめる代物だ。
【5th STAGE】
“明日”という、あくまで手段でしかない存在に踊らされている。冷静と情熱の間にある、エアコンがしっかり効いた精神状態で考えなければいけない。
※ようやく真剣に考え始めた
おばあさんがショールームを観察する目も、序盤とは打って変わり[マジメの化身]と言って差し支えなかった。そのペン運びを見守ると、半分くらいで「これはヤバい」と感づいた。が、わたしは彼女を信じることにした。
「できた」
「部屋に入った瞬間、部屋内に内蔵された人感センサーが」
「人感センサー」
「無理だろ」
「無理じゃん」
「そもそもAと、どうやってヘップバーンのある部屋に行くのさ」
「ヘップとは距離のあるタイプだしな」
「Aは」
「お前んちにヘップのポスターとかないんか」
「ない」
「ヘッ」
「オードリー春日ならまだ可能性ある」
「すまんそういうつもりのヘッじゃない」
「ヘップを発音よく言おうとした」
【6th STAGE】
「これは・・・」
通路の一角に設置された、大きな姿見。ヘップのくだりで猛省した我々は「次こそは」をスローガンに、目を光らせた。
「ミラーは恰好のアイテム」
「視覚トリックのやつだ!」
鏡を使って、急に目の前からレゴを持ったレゴ(明日)が現れるシーンが思い浮かんだ。都合のよいことに、すぐ近くに家具の配置シミュレーターがあったので、このツールで仕掛けを深堀りすることにした。
「まず、部屋に鏡があります」
「回ってない?やけにデカいし」
「ほうら出てきた」
「ちょっと待て」
「課題は3つです」
「広告代理店の人だ!」
「①回ってる②部屋の真ん中すぎ③デカすぎ」
「そして回ってる」
半ば自滅した我々は、答えを見つけられないまま展示ルームを後にした。
もはやA邸にレゴを送ることも頭をよぎった。
しかし店内の壁には、1st STAGEのガイシャによる「明日こそが具現者たる存在」というダイイングメッセージが残されていた。
【やっぱりこのイメージでいきたい】
もっとトライ&エラーが必要だ。
やがて1Fレジにたどり着いた私の目の前に、アレが姿を現した。
「これは・・・」
『そうだ』
『明日が入る袋だ』
振り返ると、
言葉の主・おばあさんはすべてを悟った表情をした。
「さよなら レイ=ペンバー」と同じ顔をしていた。
「かばん」
「思い当たる節っていうのは」
「これだったのか」
(引用:https://www.amazon.co.jp/ref=nav_logo)
皆さんもご存知、大容量×使用性の高い素材感に定評のあるIKEAバッグ。物の本によると、杉並区ではこの袋でコインランドリーに来るやつは“センスがある感”を醸し出すことが正式に認可されている。
「そうだ」
「さっきからゼフの返事すんな」
(引用:http://wakaba001.blog99.fc2.com/blog-entry-134.html)
「このカバンとおれを巡り合わせるために」
「シミュレーションさせたのか」
「うん」
「なんて無駄な時間だったんだ」
「三井寿より時間を無駄にしてる」
「でも、イメージできたでしょ?」
「Aにどうやってレゴをあげるのか」
「そして」
「死ぬまで友達にレゴを贈り続けるのが、どういうことか」
「うん」
「たぶん、そこにあるのは」
「狂気と」
「乱舞」
「ナイスだね」
「ナイス乱舞をかばんに詰め込んで」
「地球は回る」
「さっき回ってたのは地球だったのか」
「そうだ」
「で、お前はこのかばんを」
「買うの?」
迷わずLサイズのバッグを手にとり、レジへと踏み出す。
※10分くらい並んだ
『引き返すつもりはない』
「ピッ」
初めてのIKEA無人レジ、勝手がわからず手は震えた。
たった数百円の買い物、現金は使えない仕様。
35,000円の車を運ぶ、たった数百円のかばん。
明日を運ぶ大事なかばんとして、青い袋を購入した。今日からお前を「asかばん(アズカバン)」と呼ぼう。
おばあさんに意見を求めたら「わろた」しか返ってこない気がしたので、今回は自分で決めた。
明日を運ぶ、asかばん。
「明日」と「かばん」のゲシュタルト崩壊がもっぱらの心配事だが、私は青色の建物で、青い車を運ぶ、青い袋を手にした。計画が成功したら、ブルーノのプレート買ってパーティしょ
よし、決行の日を決めよう
【一生続けるシリーズ「レゴシティ編」 第2話 終わり】