第15話 感じるな、考えろ(キカクシリーズ「岐阜編」)
※イメージ
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れて初任給でMacを購入したものの、YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、「もっとITを駆使している感を醸し出したい」と感じていた。
そこで、
有名IT企業に勤める旧友・二嶋と
(本人のFacebookより引用)
“こだわりの使徒” こと世界と共に、
(本人のFacebookより引用)
観光資源をただ享受して楽しむことよりも、
ITを駆使している感を醸し出すことを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
第2回キカクが終わった折に浮上した「やらせ疑惑」を払拭するため、第3回キカク会議を行なった末、いわばストイック系キカクの王道ともいえる『三十三観音巡り編』が幕を開けた。
3人体制になった我々は当日、恵那駅に集合
するはずだったが、大阪から新幹線で向かっていた二嶋が“新横浜駅まで寝過ごす”トラブルが発生。
さらに二嶋は、そのまま帰省するという暴挙に出た。
(※実際のLINE)
二嶋に失望した私と世界は第1番礼所「東禅寺」を目指し、恵那駅を出発したのである。
※イメージ図
【☞第14話を見逃した方はこちらから】
stepfatherena15.hatenablog.com
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ーーー街は年末、空は冬晴れ。
我々は今から2日間かけて、下の地図にある三十三カ所を巡る。
勿論、インチキせずに巡る。
第1番礼所「東禅(とうぜん)寺」には
恵那駅からわずか6、7分で到着した。
到着して、すぐに気付いた。
お寺も年末休みに突入している。
人っ子一人いない。
「まあ、いないよな」
「うん」
「当然(とうぜん)寺」
「やめろ」
世界はおもむろにセットを組み始めた。
そしておもむろに撮り始めた。
本キカク、記念すべき1枚目。
【第1番礼所 東禅寺】
ぱしゃり。
おばさんグループの旅行にありがちなポーズをしながら私は、
もやもや感を抱えていた。
それは、「このキカク、どうすれば面白くなろうか」という問題だ。
そして思う。
「あと32カ所もあるのか」
【第2番礼所 長栄寺】
年末の大掃除をしているお寺の方々を見ながら、
私は心の引っかかりの正体に気付いた。
ーーー「観音様いなくね?」
「あの、すいません」
「」
「観音様ってどこに」
【第3番礼所 高安寺】
「なあ」
「観音様が出てこないのは画的にヤバいぞ」
「うん」
「キカクのタイトル詐欺になってしまうな」
「これでは“お寺の入口写真集編”だ」
「あとさ」
「うん」
「このキカク、多分あんまり面白くないな」
少し話は逸れるが、
きっと誰しも経験したことがある話をば。
日常生活の中で、誰かといて、何かをして
「ここにいるのが自分である必要はあるのか」
と、思い悩むこと。
誰とでも、ディズニーへ行けば夢の国の住人になれる。
誰とでも、ハワイへ行けばのんびりバカンスができる。
それは言い換えると、ディズニーやハワイへ行って楽しむのは誰でも出来るということだ。
(http://curie.trippiece.com/matome/)
そうやってモノコトを消費するだけの日々が肯定される風潮は、人々の生き方をよりスピーディな「充実した毎日の演出」レースへ変えていったように思う。
では「岐阜編」の我々はどうだろう。
「もっとITを駆使している感を醸し出したい」
「娯楽を享受して生きているだけじゃ退屈だ」
何が言いたいかと言うと、
そういう按配でシリーズを始めたはずなのに、
三十三観音編でやっていることは彼らと同じ。
決められた場所を巡り、その証拠写真を撮る。
こんなのちっとも面白くない。
思考放棄していた自身を恥じた。
ーーー我々はキカクに挑戦するため、ここにいる。
そしてこの物語で誰かの気持ちが少しまったりする。
そんなまろやかな瞬間を作り出すことを目指している。
「キカクってなんだったっけ」
初心にかえったとき、肩の荷は下りた。
考えなければ、日々に、些細な心の揺れ動きに
目の前にありふれるモノコトに
面白さを見出すことも、感じることも出来ない。
「撮るぞーう」
【第4番礼所 長国寺】
①IT感を小出しすることにした。
【第5番礼所 大林寺】
②無邪気さも忘れないように。
しかし、そんな我々の牛歩をあざ笑い
そして妨げる存在が1つだけある。
時間という名の悪魔だ。
二嶋の帰省騒動でスタートが遅れたこともあり、
すでに日は傾き始めていた。
「はい、撮るぞ」
「」
【第6番礼所 源長寺】
③結局こうやって雑になる。
長い戦いはまだ始まったばかり。
巡った観音様:6/33カ所
(「岐阜編」第15話 おわり)
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