第20話 さようなら、三十三観音(キカクシリーズ「岐阜編」)
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れて初任給でMacを購入したものの、YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、『もっとITを駆使している感を醸し出したい』と感じていた。
そこで、
有名IT企業に勤める旧友・二嶋
やたらこだわりの深い友人・世界
そんな2人と共に、
観光資源をただ享受して楽しむことよりも、
ITを駆使している感を醸し出すことを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
三十三観音編はいよいよ最終回。
群青の彗星は行く、トコトコと
静かな町を、まだひた走る。
人は、12月30日に何かやり残した気分になる。
本編は、信じられないほど緩やかに怒濤の結末を迎える。
しかしそれがどんな形だったとしても、結局私たちは来年も再来年も、家で部屋の大掃除をしなければばならないのだ。
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ここが新しい物語の舞台だ。
三十三観音巡りも、残すは5つのみとなった。
これだけの道を走ってきた、もうゴールは目の前。
ZARDの「負けないで」を聴いて心の準備もできた。
しかし、世界はきわめて冷静に現状を分析する。
【第29番礼所 長楽寺】
「なあ」
「はい」
「陽が沈もうとしているな」
「だな」
「お前、今さ」
「諦め方のシナリオ考えてるだろ」
「」
『29番で日が暮れて、挑戦は終わりになってしまった』
「何を言ってるんだ」
「にしてもいい眺めだな、ここ」
「旅路の果てに、我々は辿り着いた」
「2015年、最後から二番目の夕暮れ」
「〆のいい感じの文章考えてるだろ」
「しつこいねえ」
「いや、正直言うとさ」
「急いでも日没までに間に合わないんだよ」
「え」
「あと4箇所な」
「まじで?」
「うん」
【世界の補足】
ご存知の方も多いかもしれないが、「お寺を巡るのは日没まで」というのが一般的なマナーだ。当然我々は社会人なので、そういったルールを遵守した上でキカクに挑戦している。
「え、じゃあ冷静にさ」
「なにこのキカク終了?」
「ああ、そうなるな」
「んー」
「そんなにあっさり発表されてもな」
「まあな、だからさ」
「終わり方を決めようぜ」
「ちなみに」
「美辞麗句を並べて終幕のカタルシスを捏造するいつもの戦法はやめてくれよ」
「うるせーよ」
「世界さ」
「おう」
「子供の頃さ、こうやって」
「年の瀬に、遠く離れた町で」
「群青の彗星に乗って、観音様をめぐる未来の自分を想像出来た?」
「まさかね」
「しかも年末に」
「寒いと」
「“予想通りの未来がやって来る”」
「そんなのあるわけないよ」
「会社の先輩にまで“群青の彗星”と呼ばれる日が来るなんてね」
「そうだよね」
「集合場所へ行くのに寝過ごして、そのまま帰省するなんて普通起こりえないしな」
「ああ、ありえないな」
「でもさ」
「ありえないことが起きるからキカクは面白いよ」
「今ちょっとドヤ顔したでしょ」
「うん」
「“ありえないことが面白い” と言えばさ」
「ほう」
「居酒屋の価格感って、メニュー見なくても何となくわかる説あるじゃん?」
(http://tokyo-lifesystem.com/2015/12/04/おしゃれな居酒屋10選/)
「んー、その説わかるかも」
「もつ煮込みの、れんげの重量感で」
「はい?」
「触った瞬間に、フッとわかる」
「どういう理屈だ」
「れんげの重量がしっかりしてる店って、やっぱしっかりしてるんだよ」
(http://item.rakuten.co.jp/karinhonpo2951/hs-279/)
「でもさ、もつ煮を軽いれんげですくって口へ運んだ瞬間」
「それがすげー美味しかったとき」
「世の中って面白いなーって思うんだよ」
「あー」
「れんげがしっかりしていないからこそ、“予想”以上というのびしろ的な何かがあるのかもな」
「で?」
「つまり、ありえないから面白いんだよ」
「美味しいもつ煮込みを、安っぽくて軽ーいれんげで差し出すようなキカク」
(http://www.misbit.com/recipe/mid002576.html)
「素敵やん」
「斜に構えつつ『愛を込めて花束を』的な」
「いつの日か、そんなキカクに挑戦したいね」
「その長い旅路、すなわち人生を楽しくいこう」
「ここは長楽(ちょうらく)寺」
「うるせえよ」
「さて」
「日没まで行けるだけ巡ろうぜ」
「よっしゃ」
「あの夕日に向かって競走だぁ」
「いい感じにエンディングへ導いてきたな」
「ここまでナチュラルだと一周まわってタチ悪いぞ」
「のーもーくらいっ」
【第30番礼所 高徳寺】
「はい」
ーーー我々は、時間に逆らうことは出来ない。
【第31番礼所 大洞院】
「はい」
「アイス食べたくね?」
「寒いからコーヒーがいいな」
「いや、熱々のもつ煮込みがいいな」
「とびっきり軽いれんげでな」
「haha:)」
ーーー時間は有限。
でも。
「じゃあどうするの?」とみんな言う。
そこにはきっとこんな答えがある、
と僕らは思う。
【最終結果】
巡った観音様:31/33箇所
※第16番礼所 玉泉寺のみ写真なし
(挑戦期間 2015.12.29-30)
【PM6:00】反省会
prrr…
prrr …
prrr…
「もしもーし」
「はい?」
「お疲れさまです」
「おつかれ!どうだった?」
「読んでのお楽しみと言うことで」
「うわ疎外感はんぱねー」
「てかさ」
「リベンジチャンスが欲しいわ」
「リベンジ?」
ーーー二嶋のリベンジ。
集合日に寝過ごし、帰省し信頼を失墜させた男のリベンジ。
元々、IT企業に勤めていることから“IT面”での活躍が期待された二嶋。しかしそのスキルはあまり発揮されていない。
「うん」
「そろそろ本気出すわ」
「帰省」
「やめろって」
「やめろって」
次回、「岐阜編」第4回キカク始動。
ついに二嶋が筆をとる。(かもしれない)
(「岐阜編」第20話 終わり)
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