新しい5月の愉しみ方【前編】(Tokyo案庵 第3回)
(引用:http://release.co.jp/r/183443/)
GWも間近に迫った4月のとある休日。
私は1人で考えていた。
「5月」という存在の特異性について。
(引用:https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shibuya/event/2016/)
世の中の人々の大半が意識していないことと思うが
5月とは、1年の中でもっとも“なんか気持ちいい”季節である。
ーーー春がやって来て数十日。衣替えはすっかり終わり、アウトドアイベントのお誘いにも夏の息吹を感じる。
手帳の文字も、心なしか踊っているようだ。
いやしかし、この表現だと
「10月だって“なんか気持ちいい”じゃないか」
「そんなの偏見だ」
といったご指摘をいただくかもしれない。
【5月vs10月 “なんか気持ちいい” 決勝戦】
(引用:http://obaco.seesaa.net/article/20624966.html)
しかし、5月には「ゴールデンウィーク」という秘密兵器もいるのだ。
優勝。
(引用:http://samuraigoal.doorblog.jp/archives/2015-06-30.html)
(引用:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160528-00010012-soccermzw-socc)
それでもだ。
それでもなお。
5月の存在感はどこかアレだ。
(引用:http://tagsecond.com/tag/リベロの武田)
いつ5月は限界を迎えたのだろう。
(引用:http://d.hatena.ne.jp/p0lar-star/20110605/p1)
悩んだ。
5月が存在感を獲得するには、“なんか気持ちいい”説の流布だけでは不十分。カギはおそらく、ゴールデンウィークのプレゼンスを今一度示すことにある。
【※イメージ図】
ゴールデンウィーク最大の課題は、夏休みや年末休みと比べて娯楽のイメージが圧倒的に弱いこと。つまり「5月らしい、なんか気持ちいい」×「夏冬のイメージを持たないイベント」の最大公約数が5月の勝利の方程式だ。
*******
【次の日】
「という経緯がありまして」
「はい」
「今回の案は、新しい“5月の愉しみ方”です」
お馴染み“ジェバンニ”こと 渕上
「とりあえず呼び出すのやめてくれないか」
「で、何すんの?」
「ピクニックだ」
(引用:http://camphack.nap-camp.com/146/3)
「なるほどな」
「私見なんだが、10月の食欲の秋・キノコ狩りやサンマの塩焼きの方が“なんか気持ちいい”ランクで言うと上じゃないか?」
(引用:http://selectgarden.net/blog/?p=413)
「たしかに、それも素晴らしい“なんか気持ち良さ”だけども」
私は“5月vs10月”決勝戦の話をした。
「なるほど」
「会話の節々に発生する『もうすぐ夏がやってくる』という予感がポジティブであり、GWを擁していることも踏まえトータルで見ると5月・ピクニックこそ至高というわけだな」
「そうそう」
「昨今すっかりナメられてしまったイベント・ピクニックの存在感を取り戻そう」
「大枠はわかったけど、ピクニックって具体的に何すんのさ」
「ピクニックにおいて在り方が凝り固まってしまった、最たる存在」
(引用:http://ameblo.jp/penguin-syokudou/entry-12007427259.html)
「そう、お弁当にメスを入れる」
「って言おうと思って画像調べたら、何かめっちゃオシャレになってるな」
【ビンにペンネ】
「ビンにペンネは困ったな」
「ピクニックもすでに進化していると」
・・・。
議論が難航してきたので、
頼れる仲間に相談することにした。
*******
prrr
「もしもし世界?ピクニックいこうぜ」
「懐かしい響きだな」
岐阜編でお馴染み「こだわりの使徒」世界
(先日東京へ異動となった)
「あ、引っ越しお疲れさまです」
「満を持してのTokyo案庵デビューですよ」
「ところで」
「はい」
「誕生日編を見る限り、このシリーズは心理戦をメインにしているようだけど」
【☞壮絶な心理戦となった第1回はこちらから】
「いや、わざとやっているわけじゃないんだ」
「今回もそういう案なのかな?」
「実は相談があって」
私は「ビンにペンネ」について話した。
「なるほど」
「話を聞く限り、答えは一つなんじゃないか?」
「」
「ビンにペンネより“なんか気持ちいい”ピクニック弁当を作ればいいじゃん」
そういえば、
世界は料理が得意だった。
「これなら妙な心理戦に陥ることなく、タイトルにふさわしいキカクになるんじゃないか?」
「だいぶ簡単に言ったけど、すげー抽象的だぞ」
「私も参加させていただくよ」
「お前、自分のフィールドに持ち込んだな」
ーーーしかし光明を見出した気もした。
そう。作るべき弁当の基盤が決まっているから、たとえば料理が苦手な女性は「サンドイッチ」や「唐揚げ」「たまご焼き」で、必然的に比較のフィールドに立たされてしまう。料理をしない女性にとってピクニックはリスキーな会合だ。
「ゆうてピクニックで作る程度のお弁当じゃん!」という人もいるだろうが、それは時代錯誤の考え。昨今、おにぎり一つで差を見せつける女子力すら存在するのだ。
(引用:http://erecipe.woman.excite.co.jp/detail/7d2be893bbeeccfaf72222c56a98e723.html)
とすると、各々がピクニック特有の“なんか気持ちいい状態”にふさわしいと感じるような弁当を持って来ればいいんじゃないか。
味の比較ではなく、チョイスも加味したお弁当トークに花が咲くこと間違いなしだ。
「ダイバーシティ」
なんて素晴らしいピクニックテーマだ。
「ありがとう、世界」
*******
かくしてTokyo案庵・第3回キカクは決まった。
5月の存在感を取り戻すため、我々はGWに弁当を持ち寄りピクニックを行う。
その日、ピクニックは新世界の扉を開ける。
*******
prrr
「あ、ちなみにだけど」
(引用:http://ciatr.jp/topics/49816)
「おれ、昔フレンチトースト屋で働いてたんだよね」
意味のない揺さぶりをかけてきた。
いや。
畢竟、人生において“心理戦”は避けて通れぬ道なのかもしれない。
(引用:http://tarotaromona.blog.fc2.com/blog-entry-208.html)
長い人生における、些細な遊び心。
私は決めた。
「戦おう」
「そういえばお前ってバイト何してたんだっk…」
「ジェバンニ、ひとつだけ言っておく」
「大戸屋なめんな」
ピクニックの新世界の扉は、私が開ける。
(Tokyo案庵 第3回【前編】終わり)
新しいプレゼント交換【後編】(Tokyo案庵 第2回)
(引用:http://eikajapan.com/christmas-present/christmas-day/)
こんにちは。
【物語に入る前に】
Tokyo案庵・第2回キカク「新しいプレゼント交換の方法」は2015年12月25日に行われたもので、前編を更新してから5ヶ月の期間が空いたことには一つの理由がある。
(引用:http://www.imore.com/reviewing-iphone-6s-and-ios-9-six-months-later)
2015年12月31日「OSをアップグレードしようとしたら画面がフリーズし、データがすべて消える事件」
“プレゼント交換編”の写真は、すべて消えた。
(引用:http://marusen.blog66.fc2.com/blog-date-200809.html)
【☞データが消えた直後の心境はコチラ】
今回登場する写真の一部は、当時を再現して撮影されたものである。
5ヶ月の時を経て、ようやく「新しいプレゼント交換の方法〜後編〜」の幕は開く。
(引用:http://www.bybj.com.cn/ProductDetails.aspx?id=449)
<前編のあらすじ>
2015年12月のとある夜、私はクリスマス恒例のイベント“プレゼント交換”について考えた末、「受け取る人を決して幸せにしないのに、人々はプレゼント交換を惰性で続けている」という現状に気付いた。
そして、現状の問題点をふまえて新しい方法を考え抜いた結果、楽しみの大半である①“選ぶ時間”②“渡すまでのワクワク感”は残しつつも「プレゼント自体を渡す必要はないのでは」という仮説を立てた。
この案を検証するため私は、
ジェバンニ・渕上
カカシデザイナー・たまき
とともに「物理的なプレゼント交換を行わないクリスマス会」を開催することに。
東急ハンズで事前に買い物を終えた私と渕上は、万全の状態で検証当日を迎えた。
【☞まずはコチラで前編の復習から】
**********
【12/25(金) クリスマス】
(引用:http://yuki18nori19.blog38.fc2.com/blog-entry-150.html)
検証当日が来た。
舞台はカラオケ。
いつもと変わらぬ飲み会が始まる。
「メリクリ」
(引用:http://news.livedoor.com/article/detail/3565444/)
(引用:http://eiga.com/movie/33420/)
状況はシンプルだ。
①私と渕上は”バレバレな位置”にプレゼントを置いている
②最後まで渡すことはないので、隠す必要もない
③誰もツッコまない
「前回のような心理戦になることはありえない」
この場にいる全員がそう思っていた。
【☞前回の案: 「誕生日の新しい過ごし方」 はコチラ】
しかし、ひとつ気になることがあった。
カカシデザイナー・たまきから「プレゼントは買ったけど渡さない」という“素振り”がまったく見受けられないのだ。
具体的にどんな素振りかを尋ねられると返答に窮するのだが、とにかく「買ったけど渡さない」スタンスで構えていた私と渕上には、それはもう一目瞭然だった。
(引用:http://nyaasokuvip.net/archives/11167)
ーーーたまきにあらかじめ伝えた「プレゼント交換はしない」旨の連絡
“買った上で交換しない”という表現を繰り返したことで読者の皆さんに誤解が生まれているかもしれないが、これは言い換えると「別にプレゼントを買わなくてもよい」という意味でもある。
(引用:http://mekemond.blog62.fc2.com/blog-entry-255.html)
たまき絶対買ってない。
買う意味がないから当然だ。
・・・。
クリスマス会的な何かを開始して15分ほど。
当日のその場においては、渡さなければ買っていないのと同じであることに気付いた。
たとえばの話。
ーーー「卒業」があるから、学校生活は美しい思い出となる。
(引用:http://blog.goo.ne.jp/escassy1/e/85d0adc8e1b4126d4e9ba99742a27fe)
前田敦子がAKBを卒業したとき、多くのファンが涙した。
EXILEのHIROさんがパフォーマー引退を発表したとき、またどうせ人が増えるのだろうと思った。
「最後の瞬間」を迎えなければ、全ての物事は行方を失ってしまうのである。
プレゼントも、渡さなければプレゼントにはなれない。
たまきは銀杏Boyzを熱唱していた。
一次会終了。
【12/25 22時30分】
***ここからの写真は2016年5月8日に撮影されたものです。***
たまきが帰ったあと、
私と渕上はキカクの反省会を行った。
絶望にうちひしがれる私に、渕上は一つの指摘をした。
「てかさ」
「東急ハンズでテキトーなプレゼントを選んだ時点でさ」
「うん」
「今回のキカクの趣旨からずれていたよね」
(引用:東急ハンズ - Wikipedia)
そう、再三強調してきた「相手を想ってプレゼントを選ぶ時間が重要である」という前提に対し、“贈る側” すなわち我々の行動は不十分だった。
ハンズで適当にプレゼントを買ってはいけなかった 。
春画展を楽しんでいる場合ではなかった。
ーーーそして結論づける、この検証は失敗だったと。
「なあ」
「なんだ」
「これほど予想通りの予想外はなかなかないぞ」
さらに語気を強め、渕上は言う。
「そもそも」
「買ったのに渡さないって何なんだよ」
「…」
「渡せよ」
プレゼントの処理はどうしよう。
これでは前編に記した、もらい手の宿命「いらないプレゼントを棚の奥にそっとしまう行為」が、渡し手である私に委ねられただけではないか。
「いま思ったんだけどさ」
「何も準備しないでプレゼントとして物を渡したらどうなるんだろうな」
(引用:http://tabelog.com/hokkaido/A0107/A010703/1018010/)
そう、今回我々の認識のベースは
「相手を想ってプレゼントを選ぶ時間=プレゼント交換」
これが「渡さなければ意味がない」という答えを導き出した。
しかし逆に、プレゼント交換の表層にある「渡すという行為」だけを抽出したらどうなるんだろう。
(引用:http://www.bonobojapan.jp/content/1737)
「ふむ」
「そうか」
「今度は“何も考えずに買った物”でプレゼント交換しようぜ」
「ほう」
「まさに①事前準備②渡すまでのワクワク を取り除いた状態じゃないか」
これで答えがわかる、上の図は見事にMECEだ。
「プレゼント交換とは何なのか」に辿り着ける。
この熱が冷めないうちに、
そうだ来月中にでもたまきと3人で再戦を行うとしよう。
いや、各々が最大限のパフォーマンスが出来るようにもう少し準備期間を設けた方がいいかもしれない。
(引用:http://drama.matomemato.me/chat/藤原竜也-松ケン-続編-映画-death-note-2016-デスノート/)
私は安堵し、次なる展開を見据えた。
刹那、渕上が私に言い放つ。
「そう来ると思っていたよ」
(引用:http://drama.matomemato.me/chat/藤原竜也-松ケン-続編-映画-death-note-2016-デスノート/)
「はい?」
「この展開になると思っていたんだ」
「はい?」
「はい」
タメになる本を繰り出した。
「今じゃないでしょ」
困った。
こちらは何も準備していない。
(引用:http://www.tv-asahi.co.jp/imayaru/)
「あざす」
「写真が上手くなる43の勘どころ」を受け取りながら私は考えた。
渡せるような物はない…?
ーーーいや、ある。
(引用:https://www.youtube.com/watch?v=e8UkgcMBwbw)
この日、岐阜編でおなじみ “世界”から「小歳暮」が届いたのだ。
「はい」
AGFのスティックタイプのコーヒー。
「あざす」
世界のおかげでこの場は乗り切った。
危なかった。
プレゼント交換で私物を明け渡す羽目になるところだった。
「もらったお歳暮をクリスマスプレゼントに使う」という行為は人としてどうかと思うが、状況が状況だ。何にせよ私は、世界のヘルプにより事なきを得たのだ。それと同時に、渕上の用意周到さに恐怖も覚えた。
「びっくりしたわ」
「」
「もう1冊ある」
ーーーTokyo案庵は「新書紹介シリーズ」になるのだろうか。
「あざす」
さて、再び窮地に立たされてしまった。
もはや打つ手は選べない。
最終手段、私物である。
最後までジェバンニにイニシアチブを握られたまま
この戦いを終えるわけにはいかない。
(引用:http://miha.at.webry.info/200611/article_4.html)
カバンの中身を再度確認し、私が差し出したのは
伊坂幸太郎の人気作
「グラスホッパー」
まだ読みかけだった。
けっこう終盤まで読んだのに。
「めっちゃ折り目ついてんな」
「…けっこう前に読み終えたやつだからな」
「へー、面白いの?」
「個人的には好きかな」
「まあ、読んでのお楽しみだよ」
***
提案:「プレゼント交換では、モノは買っても渡す必要はない」
****【試した結果】****
①ちゃんと渡した方がいい。
②考えられたプレゼントでもそうではないプレゼントでも嬉しいが、前者の方が嬉しい。
③友人から物をもらうのは何だかんだ嬉しい。
結論:考えてプレゼントを贈ると、何か伝わる。
***************
【エピローグ】
後日、ジェバンニ渕上から1枚の写真が届いた。
やはりプレゼントは気持ちのよいものだ。
(Tokyo案庵 第2回 【後編】終わり)
第20話 さようなら、三十三観音(キカクシリーズ「岐阜編」)
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れて初任給でMacを購入したものの、YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、『もっとITを駆使している感を醸し出したい』と感じていた。
そこで、
有名IT企業に勤める旧友・二嶋
やたらこだわりの深い友人・世界
そんな2人と共に、
観光資源をただ享受して楽しむことよりも、
ITを駆使している感を醸し出すことを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
三十三観音編はいよいよ最終回。
群青の彗星は行く、トコトコと
静かな町を、まだひた走る。
人は、12月30日に何かやり残した気分になる。
本編は、信じられないほど緩やかに怒濤の結末を迎える。
しかしそれがどんな形だったとしても、結局私たちは来年も再来年も、家で部屋の大掃除をしなければばならないのだ。
【☞第19話を見逃した方はコチラから】
【☞第3回キカクのスタートはこちらから】
三十三観音めぐり編 カテゴリーの記事一覧
ここが新しい物語の舞台だ。
三十三観音巡りも、残すは5つのみとなった。
これだけの道を走ってきた、もうゴールは目の前。
ZARDの「負けないで」を聴いて心の準備もできた。
しかし、世界はきわめて冷静に現状を分析する。
【第29番礼所 長楽寺】
「なあ」
「はい」
「陽が沈もうとしているな」
「だな」
「お前、今さ」
「諦め方のシナリオ考えてるだろ」
「」
『29番で日が暮れて、挑戦は終わりになってしまった』
「何を言ってるんだ」
「にしてもいい眺めだな、ここ」
「旅路の果てに、我々は辿り着いた」
「2015年、最後から二番目の夕暮れ」
「〆のいい感じの文章考えてるだろ」
「しつこいねえ」
「いや、正直言うとさ」
「急いでも日没までに間に合わないんだよ」
「え」
「あと4箇所な」
「まじで?」
「うん」
【世界の補足】
ご存知の方も多いかもしれないが、「お寺を巡るのは日没まで」というのが一般的なマナーだ。当然我々は社会人なので、そういったルールを遵守した上でキカクに挑戦している。
「え、じゃあ冷静にさ」
「なにこのキカク終了?」
「ああ、そうなるな」
「んー」
「そんなにあっさり発表されてもな」
「まあな、だからさ」
「終わり方を決めようぜ」
「ちなみに」
「美辞麗句を並べて終幕のカタルシスを捏造するいつもの戦法はやめてくれよ」
「うるせーよ」
「世界さ」
「おう」
「子供の頃さ、こうやって」
「年の瀬に、遠く離れた町で」
「群青の彗星に乗って、観音様をめぐる未来の自分を想像出来た?」
「まさかね」
「しかも年末に」
「寒いと」
「“予想通りの未来がやって来る”」
「そんなのあるわけないよ」
「会社の先輩にまで“群青の彗星”と呼ばれる日が来るなんてね」
「そうだよね」
「集合場所へ行くのに寝過ごして、そのまま帰省するなんて普通起こりえないしな」
「ああ、ありえないな」
「でもさ」
「ありえないことが起きるからキカクは面白いよ」
「今ちょっとドヤ顔したでしょ」
「うん」
「“ありえないことが面白い” と言えばさ」
「ほう」
「居酒屋の価格感って、メニュー見なくても何となくわかる説あるじゃん?」
(http://tokyo-lifesystem.com/2015/12/04/おしゃれな居酒屋10選/)
「んー、その説わかるかも」
「もつ煮込みの、れんげの重量感で」
「はい?」
「触った瞬間に、フッとわかる」
「どういう理屈だ」
「れんげの重量がしっかりしてる店って、やっぱしっかりしてるんだよ」
(http://item.rakuten.co.jp/karinhonpo2951/hs-279/)
「でもさ、もつ煮を軽いれんげですくって口へ運んだ瞬間」
「それがすげー美味しかったとき」
「世の中って面白いなーって思うんだよ」
「あー」
「れんげがしっかりしていないからこそ、“予想”以上というのびしろ的な何かがあるのかもな」
「で?」
「つまり、ありえないから面白いんだよ」
「美味しいもつ煮込みを、安っぽくて軽ーいれんげで差し出すようなキカク」
(http://www.misbit.com/recipe/mid002576.html)
「素敵やん」
「斜に構えつつ『愛を込めて花束を』的な」
「いつの日か、そんなキカクに挑戦したいね」
「その長い旅路、すなわち人生を楽しくいこう」
「ここは長楽(ちょうらく)寺」
「うるせえよ」
「さて」
「日没まで行けるだけ巡ろうぜ」
「よっしゃ」
「あの夕日に向かって競走だぁ」
「いい感じにエンディングへ導いてきたな」
「ここまでナチュラルだと一周まわってタチ悪いぞ」
「のーもーくらいっ」
【第30番礼所 高徳寺】
「はい」
ーーー我々は、時間に逆らうことは出来ない。
【第31番礼所 大洞院】
「はい」
「アイス食べたくね?」
「寒いからコーヒーがいいな」
「いや、熱々のもつ煮込みがいいな」
「とびっきり軽いれんげでな」
「haha:)」
ーーー時間は有限。
でも。
「じゃあどうするの?」とみんな言う。
そこにはきっとこんな答えがある、
と僕らは思う。
【最終結果】
巡った観音様:31/33箇所
※第16番礼所 玉泉寺のみ写真なし
(挑戦期間 2015.12.29-30)
【PM6:00】反省会
prrr…
prrr …
prrr…
「もしもーし」
「はい?」
「お疲れさまです」
「おつかれ!どうだった?」
「読んでのお楽しみと言うことで」
「うわ疎外感はんぱねー」
「てかさ」
「リベンジチャンスが欲しいわ」
「リベンジ?」
ーーー二嶋のリベンジ。
集合日に寝過ごし、帰省し信頼を失墜させた男のリベンジ。
元々、IT企業に勤めていることから“IT面”での活躍が期待された二嶋。しかしそのスキルはあまり発揮されていない。
「うん」
「そろそろ本気出すわ」
「帰省」
「やめろって」
「やめろって」
次回、「岐阜編」第4回キカク始動。
ついに二嶋が筆をとる。(かもしれない)
(「岐阜編」第20話 終わり)
****【☆過去記事一覧】****
☆あけてつ編 ☞あけてつあるけ編 記事一覧
☆かかし編 ☞かかしコンテスト編 記事一覧
第19話 おあつらえむき(キカクシリーズ「岐阜編」)
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れて初任給でMacを購入したものの、YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、『もっとITを駆使している感を醸し出したい』と感じていた。
そこで、
有名IT企業に勤める旧友・二嶋と
(本人のFacebookより引用)
“こだわりの使徒” こと世界と共に、
(本人のFacebookより引用)
観光資源をただ享受して楽しむことよりも、
ITを駆使している感を醸し出すことを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
『三十三観音巡り編』はいよいよ佳境。
なんやかんやありながら第20番礼所まで辿り着いた我々。
1台の車は、誰も知らない道を静かに進み続ける。
【☞第18話を見逃した方はコチラから】
【☞第3回キカクのスタートはこちらから】
三十三観音めぐり編 カテゴリーの記事一覧
*******
ここが新しい物語の舞台だ。
【2015年12月30日】
群青の彗星は、恵那市内をひた走る。
群青の彗星は、恵那市内をぐるぐるしている。
群青の彗星には政治がわからぬ。
群青の彗星は、町の牧人である。
「なあ」
「はい」
「このキカクが成功したら、まず何したい?」
「オリンピック金メダリストへの質問みたいだな」
『日本の美味しいご飯が食べたいです』
「それさ」
「留学へ行って日本人とばっかりつるんで1年間過ごしたやつみたいな答えだな」
「手厳しいな」
「ちなみに」
「模範解答はなんなの」
「A.実家に帰って布団で寝たい」
「お前正月気分か」
「気分じゃなくて正月だ」
※このキカクは2015年12月30日に行なわれたものです。
車内ではPUFFYが流れていた。
(http://archive.eco-reso.jp/fes10_report/19/puffy/)
「アジアの純真」はさしずめ
「群青の彗星」の仲間的な何かだ。
「さっきの質問、正解がわかったよ」
「なんだい」
「カニ食べにいきたい」
【第21番礼所 徳祥寺】
空いていなかった。
恵那に蔓延る“年末感”は、
さらに我々へ牙をむきはじめたのだ。
【第22番礼所 林昌寺】
【第23番礼所 常久寺】
「いよいよあと10箇所だな」
「おあつらえむきのBGMはいかが?」
「あれか、ZARDか」
「ZARDはもうちょい進んだらだな」
「そういえばさ」
「うん」
「音楽に励まされたり、音楽を聴いてふと思い出の1ページが開く瞬間ってさ」
「IT感はまるでないけど、なんかいいよね」
「」
「何でこのタイミングでいいこと言おうとした?」
「いかなるキカクにおいてもプレゼンスを示す」
「いかなる状況でも“使われる発言”をする」
「それが世界たる所以」
「そっか」
「着いたぞぉう」
【第24番礼所 天長寺】
「はい」
【第25番礼所 威代寺】
「はい」
【第26番礼所 瑞現寺】
「はい」
「はい」
【第27番礼所 洞禅院】
「なんだこの作業感は」
「でれってて でれってて んでんでんでんで」
「でれってて でれってて んでんでんでんで」
「おっ」
「24時間テレビとか27時間テレビでさ」
「うん」
「ラストの感動的なシーンあるじゃん」
(http://girlschannel.net/topics/193536/)
「もうすぐゴール!的な時間帯のやつ」
「仲間と並走するシーンとか泣けるよなぁ」
「気になってたのがさ」
「『サライ』とか『負けないで』って」
「みんな2番のAメロあたり曖昧だよね」
「たしかにな」
「場の雰囲気で歌ってる人が大半だな」
「1番のサビが明けた途端に声量が弱気になるよね」
「女子にもバスにもつられちゃうやつな」
「そうそう、探り探りの感じ」
「で?」
「終盤におあつらえむきな『あるある』でした」
「着いたぞぉう」
【第28番礼所 自法寺】
さて。年末年始からお付き合いいただいた
『三十三観音巡り編』は次で最終回。
残すお寺は5つ。
日は沈みかけている。
果たして我々は三十三観音を(16番以外)全て巡った事実を証明できるのか。
「画」と「雑談」だけで駆け抜けた第3回キカク
衝撃的な結末を約束します。
お楽しみに。
巡った観音様:28/33カ所
(「岐阜編」第19話 終わり)
****【☆過去記事一覧】****
☆あけてつ編 ☞あけてつあるけ編 記事一覧
☆かかし編 ☞かかしコンテスト編 記事一覧
第18話 困ったときはスラムダンクを読め(キカクシリーズ「岐阜編」)
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れて初任給でMacを購入したものの、YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、『もっとITを駆使している感を醸し出したい』と感じていた。
そこで、
有名IT企業に勤める旧友・二嶋と
(本人のFacebookより引用)
“こだわりの使徒” こと世界と共に、
(本人のFacebookより引用)
観光資源をただ享受して楽しむことよりも、
ITを駆使している感を醸し出すことを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
『三十三観音巡り編』は2日目、
いよいよ折り返しの第17番礼所まで進んだ。
そんな中、第17話の更新中に“第16番礼所の写真が残っていない”事実に気付いた私は途方に暮れ、何もかも捨ててしまいたい気持ちになり、全然違うことを考えながらandymoriを聴いていたのである。
(http://natalie.mu/music/news/12418)
【☞衝撃の第17話を見逃した方はこちらから】
【☞第3回キカクのスタートはこちらから】
三十三観音めぐり編 カテゴリーの記事一覧
*******
「三十三観音編」は、前回の更新から少し時間が空いた。
(http://mercari-guide.com/mercari-price-set/)
猛烈に悩んでいた。
理由はひとつ。
第16番礼所の写真が残っておらず
この時点でキカクとしての「アウト」が確定したこと。
(http://matome.naver.jp/odai/2141938660891859901)
このあと起きたことをどれだけ伝えようと、三十三観音編の結末は同じ。
「全てのお寺をまわったけど、1枚だけ写真が残っていない」という、今までと似たような“インチキ臭いエピローグ”にしかならない。
めっちゃカッコ悪い。
何より、IT感がない。
キカク会議で、あれだけ「結果にこだわろう」と話し合ったのに。
そもそも1人が集合日に帰省した時点でおかしい気もしてきた。
「全部前フリだろ」
「またこのパターンかよ」
そんな辛辣な声を受け入れる覚悟もしている。
(http://blog.goo.ne.jp/pikkibikki/e/e9a21814f7ee2eac66f91100bf3eac61)
ただ。
このあと起きたことを伝えたい。
2015年12月30日の
どうしても届けたいのである。
(恵那市の名物・寒天を紹介する世界)
そういえば。
それはもう何度も何度も読み返して、
多くの男性が“ストーリーを丸暗記している”といっても過言ではない、スポーツマンガの金字塔『スラムダンク』を今でも読んでしまうのはなぜだろう。
(http://shin-dan.net/shindan/30)
いつ読んでも、最後の対戦相手・山王戦のラストシーンでは涙が止まらない。また、日に日に成長してゆく主人公・桜木花道をはじめ、各々の葛藤を抱えながらコート上で懸命に戦うキャラクターたちに何度励まされたことだろう。
というわけで、久々にスラムダンクを読んでみることにした。
(http://matome.naver.jp/odai/2138945577922856501)
(http://matome.naver.jp/odai/2139642929875790001)
(http://moviebox.black/itnews/index?tags=スラムダンク)
やっぱり素晴らしい漫画だった。
泣いた。
そして思った。
たとえ結末がわかっていたとしても、三十三観音巡りに挑む我々の姿を描くことで、誰かに何かが伝わるのではないか。
ここ数ヶ月、岐阜編を書くことをルーティンとしていた私は、この由々しき事態においても大好きなマンガ『スラムダンク』を読むことで光明を見出した。
ありがとう、スラムダンク。
スラムダンケ。
今の我々がすべきことは、途中で投げ出すことではない。続きを書いて「本当に達成する気だった」スタンスをそれとなくアピールすることだ。
結果とは過程のおまけだ。
「とまあ、いろいろ経緯がありまして」
「はい」
「続きを書きます」
「はい」
「早く進もうぜ」
「帰省」
「それなそれ」
「おれまだ世界と1回も会ってない」
「そりゃ帰省したもの」
「そりゃ帰省するさぁ、人だもの」
【第18番礼所 観音寺(管理場所:龍護寺)】
もう一度幕を開けよう。
私は(こんな結末になるとは予想だにしていないアホ面で)龍護寺の歴史について学んだ。ここには「本能寺の変」で有名な明智光秀の供養塔が建立されている。
明智光秀自身も、我々が写真を取り損ねていると気付かずにやって来るとは思わなかっただろう。
【13時 昼食】
明智駅で昼食をとった。年末でどこもお休みだったので「恵那のジャスティス」ことバロー(※写真左後ろ)でお弁当を買った。
「美味いな」
「こりゃウマい」
バローは我々を助けてくれる大事な仲間だ。
また、以前紹介した「大正村」の村長に就任した女優・竹下景子さんを歓迎するのぼりがたくさんあった。
【※第6話参照】
「ちょっとおんさい祭り」の折には地元の方達で埋め尽くされたこの広場も、年末のせいか人の姿がまったく見えない。
【第19番礼所 安住寺】
【第20番礼所 普門寺】
ーーーこんな結末になるとわかっていたとしても、我々はIT感を醸し出しただろう。
ーーーそれは、インターネット世代に生まれた若者の宿命。
人の役に立っているかいないかの差だ。
「おいおい」
「景子と恵那うだぜ」
(※恵那う:「恵那なう」の意)
「ここは普門(ふもん)寺」
「このランデブー、不問にします」
「うぃっしゅ」
2週間後にDAIGOと北川景子の結婚が発表された。
「MNYっすね」
「マジ年末休み」
次回からは三十三観音巡りの後半戦。
左手は添えず、右手で曖昧にタップして最後までお付き合いください。
(http://prcm.jp/album/mini326kirin/pic/32329495)
巡った観音様:20/33カ所
(「岐阜編」第18話 終わり)
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第17話 “聞こえる”説(キカクシリーズ「岐阜編」)
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れて初任給でMacを購入したものの、YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、『もっとITを駆使している感を醸し出したい』と感じていた。
そこで、
有名IT企業に勤める旧友・二嶋と
(本人のFacebookより引用)
“こだわりの使徒” こと世界と共に、
(本人のFacebookより引用)
観光資源をただ享受して楽しむことよりも、
ITを駆使している感を醸し出すことを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
『3人体制の初陣』として幕を開けた三十三観音巡り編は1日目が終了。
二嶋の帰省騒動や度重なる道草の影響でペースは芳しくなかったものの、最低ラインとして設定していた10カ所を巡り終えた。
“残す1日で23カ所を巡りきれるのか”
2015年12月30日。
身支度を終えた我々は、早速あの車に乗り込み作戦会議を始めた。
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三十三観音めぐり編 カテゴリーの記事一覧
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三十三観音巡りは2日目を迎えた。
「さて」
「アイツとは久しぶりの再会か」
「うん、半年ぶりかな」
「群青の彗星」
「あのさ」
「オープンカーって寒いな」
「たしかにな」
「しかしだ」
「うん」
「オープンカーってIT感あるじゃん」
「…」
「そうか?」
「うん」
「寒いのを我慢してまで?」
「うん」
「前言ったかもしれないけどさ」
「風邪引くっていう行為は『IT感のない行動ランキング(※himagine調べ)』のだいぶ上位だぜ」
バックアップを取り損ねたせいで明日ケータイのデータが全て消えるとは夢にも思っていない私は、岐阜編の先輩として世界に「IT感とは何か」を説いた。
「オープンカーで街を行く」
これは、IT感を醸し出したいビギナーがやりがちな誤りである。
イケてるIT企業に勤めるサラリーマンがやりそうなことに「IT感」があるわけではない。肝心なのは、その思考や行動の核に「IT感」があるかどうかだ。
あれこれ言葉を重ねたが
つまるところ、私は寒いのがイヤだった。
しかしその一方、
今までの人生で「オープンカーで街を行く」経験がなかった私は、デビューするには絶好の機会だと思い、世界の意見に同意した。
ここに合意がなされた。
アグリーしてコンセンサスをとって真冬にオープンカーした。
IT感のある決断だ。
念のため、最低限の装備を購入した。
商品はもちろん、“ジャスティス”ことバローのものだ。
「ここで時間割いている場合じゃあないよ」
「参りましょう」
我々は早速11番を目指し出発した。
今日も素晴らしい快晴だ。
「おっ」
年賀状を運ぶバイクマンだ。
「年末だねえ」
季節感があった。
町並みもいい感じ。
ここは城跡がある岩村エリアである。
【☞詳しくはコチラから】
戦国時代になんやかんやあった歴史深い場所らしい。
穏やかな風に当たりながら、11番に到着した。
【第11番礼所 盛巌寺】
今日も今日とて門松はスタイリッシュ。
【第12番礼所 清楽寺】
朝陽が優しく注ぎこまれてくる。
こんな日はオープンカーが丁度良い。
出発時の決断は吉と出た。
「恵那が味方してくれてるみたいだな」
「最高のロケーションだね」
「我々への応援が今にも聞こえてきそうだ」
「回れ回れと」
運転する世界をよそに、
私はとあることを考えていた。
ーーー座っているだけだとヒマだ。
運転してもらっているので寝るわけにもいかないし、ふと頭をよぎった「コンビニでスパイシーチキンを買って食べる」という選択肢も失礼な気がする。
そこで私は、IT感のある助手席スタイルを探し始めた。
「ここの道をまっすぐかい?」
「」
「なあ」
「まっすぐで」
「聞こえてる」
「うい」
【第13番礼所 万勝寺】
13番に到着した。
広い。
三十三箇所の中で一番広いポイントではなかろうか。
この写真、よーく見ると私も写っている。
遠近感があった。
雲ひとつない空と、万勝寺をなす色や素材たち。
観音様もいた。
万勝寺が他のお寺と異なっていたのは、
元旦に向けた準備作業をしている人たちがいたことだ。
甘酒が振る舞われたり、年始感のある催しが行われるのだろうか。
だいぶ引きで写真を撮っていたので、私は待機中、作業している方から疑惑の目を向けられた。
「いえ、待機してます」
駐車場も広い。
「今日はいいペースだね」
「ガンガンいこうぜ」
順調な道すがら、カカシに遭遇した。
ーーーあの日のことを思い出す。
忘れえぬ、絶望。
「提出さえしていれば…」
こうして現地で他の作品を見てみると、
やはりバロ助はクオリティの高いカカシだった。
しかし、結果が全てだ。
「今回こそは」
そう思った。
【第14番礼所 万光寺】
「そういえば」
「もうすぐスターウォーズが上映されるな」
「何年ぶりかのやつだっけか」
「そうそう」
「新作を友達と見に行くことになったからさ」
「一週間で過去作品全部観たわ」
「マジで?」
「途中からは完全に作業だった」
「面白かったけど」
「塁はスターウォーズ観てる?」
「出てる」
「あのいっぱいいる中の1人、俺なんだよね」
「マジで?」
【第15番礼所 円頂寺】
まだ午前中。
我々はぐんぐん進む。
少し緑が深くなってきた。
「なんか奥地感がすごいな」
「キカクに挑戦している感があるな」
「自然の声が聞こえてくるね」
「人の声が聞こえなさすぎて感覚研ぎ澄まされてるんじゃないか」
「言われてみれば聞こえるな」
「これ、やばい現象じゃないよね?」
「お蔵入り的な」
「実際聞こえないけどな」
ーーーここで書く手が止まる。
信じられないトラブルが起きた。
【第16番礼所 玉泉寺】
(http://pbskids.org/tv-times/)
写真が残っていない。
なんということだ。
ネットで風景を確認したが、ここには間違いなく立ち寄り写真撮影をしているはずだ。
まさか。
(http://gathery.recruit-lifestyle.co.jp/article/1142095253055001601)
「自然の声が聞こえてくるね」
「自然の声が聞こえてくるね」
「自然の声が」
「聞こえる?」
あらかじめ言っておくが、これはインチキではない。
なんなら、インチキであってほしかった。
あらぬ疑惑を生みかねない物語展開を避けるために
「写真」という動かぬ証拠を撮り続けてきたのに。
残念ながら、“三十三観音コンプリート”への挑戦は
この時点で不達成となることが確定してしまった。
【第17番礼所 黄梅院】
そんなことになるとは知らず、まだまだ巡り続ける我々。
どんなモチベーションで続きを書けば良いのだろう。
オンタイムの気持ちを綴って、今回はおしまい。
巡った観音様:17/33カ所
(「岐阜編」第17話 終わり)
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第16話 星の瞬く夜にITを(キカクシリーズ「岐阜編」)
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れて初任給でMacを購入したものの、YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、「もっとITを駆使している感を醸し出したい」と感じていた。
そこで、
有名IT企業に勤める旧友・二嶋と
(本人のFacebookより引用)
“こだわりの使徒” こと世界と共に、
(本人のFacebookより引用)
観光資源をただ享受して楽しむことよりも、
ITを駆使している感を醸し出すことを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
『3人体制の初陣』として幕を開けた第3回キカク
「三十三観音巡り編」は、序盤から“キカク”の過酷さを再認識させられる道程となる。(二嶋はトラブルのため離脱)
“ただ場所を巡るだけ”の挑戦はキカクと呼べるのか。
そんな自問自答をしながら我々は、日没迫らんとする空に煽られて第7番礼所「宗久寺」へ向かうのであった。
【☞第15話を見逃した方はこちらから】
stepfatherena15.hatenablog.com
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ーーー冬晴れの空の下。
時刻は16時を過ぎた頃。
我々は焦っていた。
(http://love-to-all.jp/renaisinri1122/)
2日間で33カ所巡ることを考えると、今日中に少なくとも10カ所は攻略しておきたい。
というのも、下記地図のうち
南端に位置する16番・17番へ午前中には辿り着きたい明日の行動予定を考えると、短距離圏内に分布する序盤(1〜10、11番)はハイペースでクリアしておかなければならない。
「今日は必ず10番まで行こう」
「そうだな」
「なんだこの“消化試合”感は」
「時間に追われるのはIT感が足りないからか?」
「だろうね」
IT感のない話し合いをしていると7番に到着した。
ここで、我々はついに“あるもの”を発見する。
【第7番礼所 宗久寺】
「おっ」
「ついにいらっしゃったな」
観音様、登場。
世界はカメラモードに入った。
門松もスタイリッシュ。
年末に訪れなければ見られない画である。
季節感があった。
ちなみに引きはこんな構図だ。
私も写真を撮った。
2日後にデータが全て消えるとは夢にも思っていない。
さて。
アングルにこだわって写真を撮っている場合ではない。
世界はいそいそと車へ向かった。
「先を急ごう」
「日没まで時間がないぞ」
「いや、ちょっと待って」
私は世界を制し、一目散に駆け出した。
※イメージ図
アレを発見し、世界を制した。
実はこの第7番礼所・宗久寺
お馴染み「あけてつ」線路近くに位置しているのだが、
1時間に1、2本しか通らないあけてつ車両が、
夕暮れに美しく染まりながら眼前に現れたのである。
壮大すぎる光景。
「これが岐阜編だよ…」
「すげえなこれは」
ーーー世界はシャッターを切った。
ぱしゃり。
あまり伝わらない仕上がりになった。
ちなみに引きはこんな構図だ。
本当にキレイな夕日だった。
「さて、先を急ごう」
「はい」
【第8番礼所 禅林寺】
少しずつ寒くなってきた。
道中で出会った人に話を聞いたのだが、恵那市の冬は積雪が少ない代わりに相当冷えるらしい。
「今日残すはあと2つだ」
「さみいな」
我々は移動中、夕飯の計画を立てた。
「夜飯は何がいいかな」
「美味いもん食べたいね」
「恵那って名物とかあるの?」
「寒天かな」
【☞ 詳しくはこちら】
「焼き肉もいいなぁ」
「寒天は?」
「そろそろ着くぞぉう」
「おい寒天」
※イメージ図
【第9番礼所 万岳寺】
立派なお寺である。
世界と私は「ITチャンス」を感じとり、
ついにMacを構えた。
(※ITチャンス:ITを駆使している感を醸し出す好機の意。)
①プロフィールにありがちなトーンオントーン配色。
Macがいい味を出しているが、いかんせん寒い。
②カフェで繰り広げられる、学生団体のミーティング。
テーブルのオシャレ感は劣らないが、いかんせん寒い。
Macがキンキンに冷えている。
これはITチャンスならず。
非常に惜しかった。
【第10番礼所 東光院】
レンタカーを返却し宿へ行こうと私が提案すると、
世界はひとつ素朴な質問をした。
「ここって星見えるのかな」
「東京よりはかなり見えるはず」
「撮影しに行かない?」
「え」
「岐阜編に新しい風を起こそう」
「風を起こす前に風邪を引いてしまうよ」
「星空にもITチャンスだ」
「そういえば」
「仙台にいた頃、先輩に教わった」
「大久保くーん」
「365日がシャッターチャンスなんだよぉ」
「にしても今日は寒いな」
「ああ、寒いな」
「ITを全然駆使出来ていない」と揶揄されて久しい岐阜編も、新しい仲間・世界の加入により、IT技術で素敵な星空をお届けするロマンチックシリーズとなる。
私は、寒さをこらえながらそれ以上のワクワクを胸に、世界の撮影にお供することにした。
というわけで、この日の〆は世界が撮影した
タイトル:「まあまあ満天の星」
「おい」
「意外と見えねえぞ」
「空のせいにすんなよ」
ーーー「明日、残りの23カ所を回りきれるか」
まあまあ満天の星空を眺めながら、
まあまあの不安に私は駆られていた。
満天じゃないくせに、空は遠く大きく見えた。
巡った観音様:10/33カ所
(「岐阜編」第16話 終わり)
※実際はかなり満天でした。
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