第17話 “聞こえる”説(キカクシリーズ「岐阜編」)
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の私は、オシャレさに憧れて初任給でMacを購入したものの、YouTubeとZOZOTOWNしか使いこなせない日々に辟易し、『もっとITを駆使している感を醸し出したい』と感じていた。
そこで、
有名IT企業に勤める旧友・二嶋と
(本人のFacebookより引用)
“こだわりの使徒” こと世界と共に、
(本人のFacebookより引用)
観光資源をただ享受して楽しむことよりも、
ITを駆使している感を醸し出すことを目指した
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
『3人体制の初陣』として幕を開けた三十三観音巡り編は1日目が終了。
二嶋の帰省騒動や度重なる道草の影響でペースは芳しくなかったものの、最低ラインとして設定していた10カ所を巡り終えた。
“残す1日で23カ所を巡りきれるのか”
2015年12月30日。
身支度を終えた我々は、早速あの車に乗り込み作戦会議を始めた。
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三十三観音巡りは2日目を迎えた。
「さて」
「アイツとは久しぶりの再会か」
「うん、半年ぶりかな」
「群青の彗星」
「あのさ」
「オープンカーって寒いな」
「たしかにな」
「しかしだ」
「うん」
「オープンカーってIT感あるじゃん」
「…」
「そうか?」
「うん」
「寒いのを我慢してまで?」
「うん」
「前言ったかもしれないけどさ」
「風邪引くっていう行為は『IT感のない行動ランキング(※himagine調べ)』のだいぶ上位だぜ」
バックアップを取り損ねたせいで明日ケータイのデータが全て消えるとは夢にも思っていない私は、岐阜編の先輩として世界に「IT感とは何か」を説いた。
「オープンカーで街を行く」
これは、IT感を醸し出したいビギナーがやりがちな誤りである。
イケてるIT企業に勤めるサラリーマンがやりそうなことに「IT感」があるわけではない。肝心なのは、その思考や行動の核に「IT感」があるかどうかだ。
あれこれ言葉を重ねたが
つまるところ、私は寒いのがイヤだった。
しかしその一方、
今までの人生で「オープンカーで街を行く」経験がなかった私は、デビューするには絶好の機会だと思い、世界の意見に同意した。
ここに合意がなされた。
アグリーしてコンセンサスをとって真冬にオープンカーした。
IT感のある決断だ。
念のため、最低限の装備を購入した。
商品はもちろん、“ジャスティス”ことバローのものだ。
「ここで時間割いている場合じゃあないよ」
「参りましょう」
我々は早速11番を目指し出発した。
今日も素晴らしい快晴だ。
「おっ」
年賀状を運ぶバイクマンだ。
「年末だねえ」
季節感があった。
町並みもいい感じ。
ここは城跡がある岩村エリアである。
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戦国時代になんやかんやあった歴史深い場所らしい。
穏やかな風に当たりながら、11番に到着した。
【第11番礼所 盛巌寺】
今日も今日とて門松はスタイリッシュ。
【第12番礼所 清楽寺】
朝陽が優しく注ぎこまれてくる。
こんな日はオープンカーが丁度良い。
出発時の決断は吉と出た。
「恵那が味方してくれてるみたいだな」
「最高のロケーションだね」
「我々への応援が今にも聞こえてきそうだ」
「回れ回れと」
運転する世界をよそに、
私はとあることを考えていた。
ーーー座っているだけだとヒマだ。
運転してもらっているので寝るわけにもいかないし、ふと頭をよぎった「コンビニでスパイシーチキンを買って食べる」という選択肢も失礼な気がする。
そこで私は、IT感のある助手席スタイルを探し始めた。
「ここの道をまっすぐかい?」
「」
「なあ」
「まっすぐで」
「聞こえてる」
「うい」
【第13番礼所 万勝寺】
13番に到着した。
広い。
三十三箇所の中で一番広いポイントではなかろうか。
この写真、よーく見ると私も写っている。
遠近感があった。
雲ひとつない空と、万勝寺をなす色や素材たち。
観音様もいた。
万勝寺が他のお寺と異なっていたのは、
元旦に向けた準備作業をしている人たちがいたことだ。
甘酒が振る舞われたり、年始感のある催しが行われるのだろうか。
だいぶ引きで写真を撮っていたので、私は待機中、作業している方から疑惑の目を向けられた。
「いえ、待機してます」
駐車場も広い。
「今日はいいペースだね」
「ガンガンいこうぜ」
順調な道すがら、カカシに遭遇した。
ーーーあの日のことを思い出す。
忘れえぬ、絶望。
「提出さえしていれば…」
こうして現地で他の作品を見てみると、
やはりバロ助はクオリティの高いカカシだった。
しかし、結果が全てだ。
「今回こそは」
そう思った。
【第14番礼所 万光寺】
「そういえば」
「もうすぐスターウォーズが上映されるな」
「何年ぶりかのやつだっけか」
「そうそう」
「新作を友達と見に行くことになったからさ」
「一週間で過去作品全部観たわ」
「マジで?」
「途中からは完全に作業だった」
「面白かったけど」
「塁はスターウォーズ観てる?」
「出てる」
「あのいっぱいいる中の1人、俺なんだよね」
「マジで?」
【第15番礼所 円頂寺】
まだ午前中。
我々はぐんぐん進む。
少し緑が深くなってきた。
「なんか奥地感がすごいな」
「キカクに挑戦している感があるな」
「自然の声が聞こえてくるね」
「人の声が聞こえなさすぎて感覚研ぎ澄まされてるんじゃないか」
「言われてみれば聞こえるな」
「これ、やばい現象じゃないよね?」
「お蔵入り的な」
「実際聞こえないけどな」
ーーーここで書く手が止まる。
信じられないトラブルが起きた。
【第16番礼所 玉泉寺】
(http://pbskids.org/tv-times/)
写真が残っていない。
なんということだ。
ネットで風景を確認したが、ここには間違いなく立ち寄り写真撮影をしているはずだ。
まさか。
(http://gathery.recruit-lifestyle.co.jp/article/1142095253055001601)
「自然の声が聞こえてくるね」
「自然の声が聞こえてくるね」
「自然の声が」
「聞こえる?」
あらかじめ言っておくが、これはインチキではない。
なんなら、インチキであってほしかった。
あらぬ疑惑を生みかねない物語展開を避けるために
「写真」という動かぬ証拠を撮り続けてきたのに。
残念ながら、“三十三観音コンプリート”への挑戦は
この時点で不達成となることが確定してしまった。
【第17番礼所 黄梅院】
そんなことになるとは知らず、まだまだ巡り続ける我々。
どんなモチベーションで続きを書けば良いのだろう。
オンタイムの気持ちを綴って、今回はおしまい。
巡った観音様:17/33カ所
(「岐阜編」第17話 終わり)
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