「岐阜編」第8話 イメトレ
こんにちは。
<前回までのあらすじ>
社会人2年目の“私”と、小学校からの旧友“二嶋”は、
ふんわりした旅行ならでは楽しさに対し全面的に反旗を翻す
企画シリーズ「思い出よりキカク」を始動。
第2回キカク「かかしコンテスト編」はいよいよ後半戦へ。
周囲の助けを借りながらコンテストを研究し、作品のデザインも決定。
そして恵那へ乗り込む日も決まった。
カカシとともに駆け抜けた夏も終わりかけ、空は秋色。
そんな休日の昼下がりに、我々はふと妄想にふけるのであった。
(※ちなみにこのシリーズのコンセプトは、
「ITを駆使している感を醸し出すこと」である)
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ここが新しい物語の舞台だ。
カカシの出品まであと少し。
我々は当然優勝を目指している。
私がこれほど結果にこだわっているのには、ひとつの理由がある。
今まで「一等賞」になったことがないのだ。
(引用:http://web.gekisaka.jp/news/detail/?143272-143272-fl)
強いて言うと
2015年に「人類最速」で海の家をオープンしたぐらいだ。
(初日の出を見に来たカップル数組から、ホームレスと間違われていた)
そんなことを思いながら、コーヒーをすする。
ふと考える。
1位になった人だけが味わえる達成感だとか、
周囲からの持て囃しというのはどんなものだろう。
そういえば。
高校時代、甲子園に出場した友人は言っていた。
「急に親戚が増える」
「応援がプチ同窓会の口実に使われる」
(引用:http://www.minokankouhotel.com/same.html)
勝ち負けがある場所に努力あり。
しかしその血と汗と涙には、思わぬ副産物があるようだ。
ふと思う。
「もし恵那市のかかしコンテストで優勝したら、どんな感じなんだろう」と。
(引用:http://www.logsoku.com/r/2ch.net/livenhk/1421394699/)
まず、恵那でちょっとした有名人になるのは間違いない。
「カカシを作ってはるばる恵那に乗り込んできた2人組」
「なんか、立ち振る舞いにIT感が漂ってるな」
「んもお醸し出し過ぎぃ」
(引用:美女に囲まれて豪華なパーティーを繰り広げる、イケメン大富豪のInstagramがハーレム状態)
これは悪くない。
いずれにせよ、今後恵那で活動しやすくなるのは間違いない。
しかし度が過ぎると、訪問するとき町がパニックになってしまうので
その危険性も忘れてはならない。
こういう見方もできる。
カカシ業界のプロフェッショナルから熱い視線が注がれるだろう。
「脅威のIT感。作物を狙う鳥たちは溜め息と悲鳴のハーモニー」
「古き良きカカシ文化に優しくドロップキック、衝撃の風味」
ところでGoogleで調べてみたところ、
カカシの制作を生業とする“職人”はほとんどいないようだ。
(引用:http://pichori.net/america/american_history.html)
棚ぼたで開拓者の座もゲットだ。
これも他ならぬ、1等賞である。
そうなると、
カカシアドバイザーも
カカシデザイナーも
みんな1等賞。
そう、1等賞になるためには
必ずしも競い合う必要などなく、
新しい価値観をつくってしまえばいい。
“お尻を出した子1等賞”とは言い得て妙だ。
この歌詞に対する疑問の声は多く聞かれるが、それは所詮
“率先してお尻を出した子”に対する嫉妬に過ぎない。
やったもん勝ちなのだ。
話はそれたが、
こうした流れでカカシはちょっとした流行りとなるだろう。
若者の間にカカシブームが到来するのだ。
歴女、
(引用:http://sutekinaoto.at.webry.info/201011/)
カープ女子、
(引用:http://thepage.jp/detail/20141203-00000008-wordleaf)
そして
『スケアクロウ女子』
(略して“スケ女”)が生まれるかもしれない。
(引用:かかし風 #コーディネート #Gジャン #ぶかぶかがすき|Coordinate Selection)
私と二嶋は、若者とカカシのハブ。
界隈のカリスマだ。
(引用:http://laughy.jp/1415327642915111373)
嬉しい悲鳴ではあるが、
スケ女が各方面にパニックを巻き起こす可能性がある。
スケ女からのLINEが鳴り止まなさすぎて、
私は通知をオフにするかもしれない。
(引用:http://www.tabroid.jp/news/2013/09/line-ircair.html)
スケ女たちのSNSアイコンは、各々のイメージを模したカカシイラスト。
流行りの「ちゃん○おメーカー」のカカシ版が誕生するせいだ。
(引用:“ちゃんりおメーカー”で自分そっくりなキャラクターをつくってみんなに広めちゃおう★ | ニュース・イベント | サンリオ)
スケ女の中の腐女子がBLマンガなんかを配信し始めたらいい迷惑だ。
(引用:サザエさん☆ アナゴとマスオのBL劇場 2 - YouTube)
勿論我々にそのケはない。
私はスッケスケの波に閉口してしまうだろう。
さて。
思う。
優勝してもいいことばかりではないと。
かといって、負けるために恵那へ赴くつもりもさらさらない。
私はカカシの作り方を調べる作業へと戻る。
BGMはpillowsの「スケアクロウ」
(引用:http://www.amazon.co.jp/スケアクロウ-初回限定盤-DVD付-pillows/dp/B000NA6OQG)
いい曲だ。
ふむ、しかし。
優勝したら忙しくなるかもしれないので、
今のうちに色々考えていおいた方がいいかもしれない。
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「リスクを負ってでも、カカシへの関心を高めることをゴールにした」
〜頑張っている感を醸し出す若者シリーズ第7弾〜 独占インタビュー
2015年恵那市かかしコンテスト優勝 himagine(大久保氏・二嶋氏)
ーーーあらためて、今回のコンテスト優勝おめでとうございます。
大久保(以下:O)「ありがとうございます」
ーー今回のhimagineさんの作品コンセプトを改めて教えてください。
二嶋(以下:N)「はい。一言でいうと“ITを駆使している感”を醸し出すことです」
ーーー詳しく教えてください。
N「本来カカシは、害鳥から作物を守るために作られています。しかし、いつの間にか“田んぼのシンボルとして設置すべきもの”という役割に変化しつつあると感じた中、あえて田園風景にミスマッチで目立つカカシを作れば、害鳥のアテンションを高められますしその結果カカシは本来の役割を取り戻すのではと考えました」
N「IT感を施したのは、その考えの中の1つの選択肢としてです」
ーーーまじめなんですね。
O「めっちゃまじめです」
ーーー大久保さんは今回の優勝に関してどのように感じていますか?
O「協力してくれた仲間に感謝したいです」
ーーーまじめなんですね。
O「本気で作りましたからね」
ーーーその一方、恵那市のご年配の方々からは非難の声もあります。
「よそ者がふざけ半分でカカシを持ってきた」
「コンテストの雰囲気を台無しにした」などなど。。
N「そのような印象を受ける方もいると思います。ただ、“気にせずにはいられない”カカシを作ろうとしたのは事実ですし、『奇を衒った』と感じられても仕方ないとは思っています」
O「言ってしまえば僕たちは、誤解をされるリスクを負ってでも“カカシへの関心を高めること”をゴールに設定しました」
ーーーその結果、岐阜県内を中心に「スケ女(※スケアクロウ女子:カカシが好きな若い女性のこと・またカカシのようなファッションを好む女性)」が急増中という、いわばカカシブームが到来してますね。
N「ちゃんりおメーカーのカカシ版としてリリースしたアプリ『スケさん描くさん』も想像以上の反響がありました」
ーーーブログを拝見させていただきましたが、まだ始まったばかりのチームなんですね。
O「我々は旧知の仲ですが、岐阜編はまだ始まったばかりです。お互いの意見をぶつけ合いながら、日々自分たちに何が出来るかを考えています」
ーーーこれからの活動も楽しみにしています。
N「ありがとうございます。土日に頑張ります」
ーーー最後に、そこまでカカシにこだわるのには何か理由があるんでしょうか。
O「特にありません」
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ふう。
悪くない、むしろいい。
そして思う。
御託はいいから早く岐阜へいこう。
次回、いよいよ本編の正念場。
恵那へ降り立ちカカシを設置する。
(第8話 終わり)