ピクニック改革(Tokyo案庵 第3回)
こんにちは。
<前編のあらすじ>
1年の中でもっとも“なんか気持ちいい”シーズン
「5月」
の、存在感は薄い。
そんなことが気になった私は新しい5月の発掘を画策し、近頃の若者に忘れられつつある「ピクニック」の存在をあらためて見直そうと考えた。
(引用:http://minadoyurika.blog.jp/archives/1009814640.html)
その結果、お弁当のラインナップが“あるある”化してしまったことが若年層に相容れないイベントとなっている理由の一つでは?という仮説に辿り着く。
この仮説を実証するために私は
ジェバンニ・渕上
Mr.こだわり・世界
とともに、
“なんか気持ちいい”お弁当を持ち寄りピクニックを行うことに。
我々はゴールデンウィークを費やし、徹底的な準備を行った。
社会人にとってかけがえのない存在・ゴールデンウィーク。
我々は「5月が生まれ変わる瞬間」を信じながら、お弁当作りに没頭したのである。
【前編を見逃した方はコチラから】
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【2016年5月8日(日)】
場所は都内・某公園。
時は来た。
「お疲れさまです」
「お疲れさまです」
「GWも終わりだねえ」
「弁当のこと考えてたらいつの間に」
今までのTokyo案庵にはない“緊張感”が場を包んでいた。
我々がいかに本気でお弁当と向き合ってきたか、写真からもおわかりいただけるだろう。
私はこの空気を出来る限り丁寧に感じ取りながら、話を進めた。
「ルールを整理しよう」
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2016.5.8
“なんか気持ちいい”弁当の鉄人
〜ダイバーシティの夜明け〜
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(引用:http://www.famitsu.com/news/201107/26047374.html)
ルール①:一番“なんか気持ちいい”弁当を作ってきた者の勝利
ルール②:審査は出場者自身で行う。
以上。
(引用:http://laughy.jp/1412742218828100694)
「見せる順番はどうする」
「潔く、一斉に披露でよくないか?」
「せーので、いきましょう」
「一斉にオープンした後、そのまま弁当プレゼンに入ります。プレゼンの順番は、私から反時計周りでお願いします」
この戦いは優劣を決めるためにやっているわけではない。ただ、
「2人がどんな弁当を作ってこようと、自分の弁当が勝つ」
この時、我々3人は間違いなく同じことを考えていた。
「さて、そろそろいきますか」
開いた瞬間、勝負は決する。
「すまん先にトイレ行くわ」
「うおぃ」
「案ずるな、世界の揺さぶりだ」
***3分後***
「ではでは」
さあ、
「お弁当ダイバーシティ時代」幕開けだ。
「せーのっ」
全員「そば」だった。
「…」
「…」
「じゃあ、君から」
「はい」
【私のお弁当】
こうなってしまったからには単刀直入に言おう。
ただの天ざるだ。
しかし、①器の本格化(近所のそば屋さんが閉店したときにくれた)によるシズル演出②ピクニック会場でのユーザビリティを考慮しためんつゆの選定は頭一つ抜けていると言えよう。
また、山菜の天ぷらを添えることで季節感を訴求。5月の存在感を向上させることを念頭に置いた、シンプルなトータルコーディネートとなった。
【世界のお弁当】
へぎそばである。
世界のチョイスは、彼が最近まで住んでいた新潟県の名産物。
正確に言うと、今回わざわざ新潟まで買いに行ったのである。
「という経緯がありまして」
「世界はんぱねーな」
「アホだろ」
「交通費自腹で」
「アホでしょ」
「案ずるなジェバンニ、おそらく別件で買ったそばが余っただけだ」
「じゃあ何で買ったときの写真残ってるのさ」
「これ見よがしにもほどがある表情してるぞ」
「ほんとだ、これはクロだな」
「そばに関してはここまで」
「続いて、容器と薬味についてです」
「おれら100パー負けじゃんこれ」
キカクにおいての“世界”を初体験するジェバンニは困惑していたが、世界は間髪入れずにプレゼンを続ける。
「まずはこの小皿」
「私が焼いたものです」
「陶芸?」
「言うまでもなく陶芸だな」
(※裏面)
「そして、このお皿に」
「静岡県産のわさびを」
「少々乗せましょう」
「完成です」
世界のこだわりが存分に溢れ出たお弁当。
ポイントとなるのは、他の2人と競合しそうなメインの容器をシンプルにピクニックらしく抑え、薬味を入れる小皿の選定(というか手作り)にスパイスを利かせた点だ。
ちなみにねぎは近所のスーパーで買ったらしい。
「器焼くのは反則だろ」
「ピクニックにそんなルールがあるかい?」
無論「ピクニックに自分で焼いた器を持ってきてはいけない」というルールはない。
「はい」
【ジェバンニのお弁当】
まず、先ほどのオープン写真をもう一度。
大半の方がジェバンニのお弁当に目がいったはず。
「そばっちゃそばだけど」
「俺のは、正しくはGrano Saraceno」
「たしかにお品書きにそう記されているな」
「Grano Saracenoの実態を教えてくれよ」
それはジェバンニ渕上、渾身の一皿。
奇を衒った作品にも見えるが、工程に一切の妥協はなかった。
学生時代に培った「まかない作り」の経験が、彼にインスピレーションを与えたという。
ピクニックを彩る、真白な舞台に舞うトマトとジェノベーゼ。
「そして」
「このステージには、まだ登場人物がいます」
「!?」
「お前らちょい足し好きすぎだろ」
「自家製?」
「いや市販」
「ほっ」
「」
「完成です」
「はい」
「お腹空いたし、食べようぜ」
「うん、結論は食べてからにしよう」
実食。
「そういえばさ」
「うん」
「引っ越しそばって、引っ越してきた人が自分で食べるんじゃなくて、周りに配るものなんだってね」
「①そばに引っ越してきました②細く長くよろしくねという意味で」
「へー」
「ただ、“細く長く”って初対面で宣告するのは寂しい気もするよな」
「ご近所さんとのつながり、大切だよな」
「というわけで、東京へ引っ越してきた世界のために今日は太麺をチョイスしたよ」
「細く長いのは、人生の道のりだけでいい」
「いいことっぽいこと言ってシーンの切れ目作ろうとするのやめろ」
「お前の悪いクセだな」
「ただ」
「塁のアイデアに一つだけ苦言を呈するならば」
「へぎそば見てみ?」
「細麺の方がつゆによく絡むだろ」
「お前もだよ世界」
「これは一本とられたな」
「ペンネなんてもってのほか」
「そして前話の伏線回収まで請け負うと」
今思えば取るに足らない相手だった【ビンにペンネ】
完食。
お腹いっぱいである。
「いやー美味かった」
「全員お弁当カブったけど楽しかったな」
「ダイバーシティもくそもなかったな」
「うん、今回は引き分けということで」
(引用:http://blogs.yahoo.co.jp/dyirap/47156024.html)
「デザート食いたいな」
「31アイスクリーム食べて帰るか」
私と渕上は腰を上げた。
「そう来ると思っていたよ」
「え」
「死神はリンゴしか食べない」
「フチガミ、お前は?」
「あ、いただきます」
***
提案:「“なんか気持ちいい”5月の休日は、天気にふさわしいお弁当を持って久々にピクニックへ行こう」
****【試した結果】****
①忘れ去られつつあるが、ピクニックは今も楽しい。
②5月の空の下で食べるそばは美味しく、“なんか気持ちいい”感がある。
③ダイバーシティを明確に謳ってしまうと、カブったとき空気が悪くなるので、今の“あるある”弁当も文化として残した方がいい。
結論:5月といえばピクニック、そばを優雅に嗜もう。
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(引用:http://ciatr.jp/topics/72305)
(Tokyo案庵 第3回【後編】終わり)
■Special Thanks: Karen Ando