「Tokyo案庵」第1回 誕生日の新しい過ごし方
ーーー12月、とある夜。
(http://www.kabegamikan.com/p/i.php?url=www.kabegamikan.com%2Fimg%2Fna9%2F121999.jpg)
私は1人で考えていた。
「誕生日」についてのあれこれ。
①SNSでの「誕生日報告」が氾濫している
【ご報告】
「私、○○はこのたび22歳になりました」
(http://girlschannel.net/topics/424335/)
こういう人がよくいる。
ラッパーのごとく周りへの感謝を
ダラッダラと綴っているが、結局
「私って友達に恵まれている上こういう時にはマジメな投稿で感謝を伝えることも忘れない成熟した人間なんやで」という自己アピールに過ぎない。
SNSの使い方は、とても難しいのだ。
トリコロール的な話にも発展しかねないので話題を戻そう。
②誕生日当日の流れが読めてしまう
「飲も!」
(http://www.appbank.net/2014/04/15/iphone-application/791424.php)
誕生日1、2週間前に連絡はやってくる。
大人になるとわかることが幾つかある。
誕生日の飲み会では必ず、1時間半ほどすると
「席に残る誰かに合図をし、おもむろに席を立つ奴」が現れる。
いわゆる“ケーキ運び人”だ。
「はーーーーーーぴばぁ」の皮切りを歌いだす役割も担っている。
声がでかい奴、もしくは
主役と仲の良い同期が担当することが多い。
また「今日買い物してた」的な素振りで
プレゼントをそのまんま店に持ってくる人もいる。
いわゆる“プレゼンター”である。
「ケーキ→ローソク吹き消し」が
一段落したあとの追い打ち担当なので、
タイミングを読む力に長けた人間が適役だ。
運び人やプレゼンターの当日の不自然な動きについてだが、
主役は絶対に気付かないフリをしなければならない。
なぜならば、
「そろそろアレのタイミング?」
「先トイレ行っといた方がいい?」
と言ってしまうのは、なんか野暮だからだ。
(http://sozai-photo.com/sorasougen/sorasougen.html)
誕生日はいつから形式的になったのだろう。
そんな悲しい世を憂う一方、
大人になってしまった人の誕生日は、
ただ祝われるためにお呼ばれするのでなく
“普段そばにいてくれる友人へ感謝する機会”
にしてもよいのでは、と考えた。
ふむ。
そういえば。
今年の誕生日、何も予定がなかった。
(http://college2ch.blomaga.jp/articles/7599.html)
さんざん「誕生日」へ文句を言いつつ、
それはそれで寂しいものだ。
というわけで、
今回の案を自分の誕生日で試してみることにした。
相談したのは
同僚の渕上君
●プロフィール
・元ラガーマン(らしい)
・帰国子女(酔うと欧米仕様になる)
・サックスがちょっと吹ける
「おれの誕生日ひま?」
「うん」
「飲みにいこうよ」
「誕生日なのに予定ないのかお前」
「うん」
今回の案を行うにあたり、
岐阜編でおなじみ “カカシデザイナー”こと
たまきも来ることになった。
ひとまず、案の概要を渕上に説明した。
「俺の誕生日だけどさ」
「うん」
「あえて、たまきに日頃の感謝をする日にしようぜ」
「お前の誕生日なのに?」
「何かこの歳になってさ、色々わかってきちゃったじゃん」
「?」
「誕生日のルールというかさ」
「そこはもうアンタッチャブルだ」
「贅沢な悩みではあるけども」
「そんなこと言ってるから今年の誕生日誰も祝ってくれないんじゃね」
「あー」
「てか感謝って何すんの?」
「いやそれはもうあれ」
「本来ならば主役が受ける施しのすべて」
(http://news.livedoor.com/article/detail/3565444/)
この日から心理戦が始まった。
コンセプトは「たまきへのサプライズ」と言いつつ、
2人がサプライズを仕掛けてくる可能性は多分にある。
私の誕生日だからだ。
しかし、「最終的に主役が驚かされた」
というオチではただの誕生日になってしまう。
この会は、最終的に
ケーキのチョコレートに
名前を書かれた者が負けだ。
それを未然に防ぐため
私はリスクを冒し、渕上と組むことにした。
(http://heavensdrive2006.blog59.fc2.com/blog-date-200712.html)
【12/4(金)当日】
たまきを含む3人のLINEで会話しつつも、
渕上と綿密に連絡をとる。
主役に秘密で、ケーキが店へ持ち込まれているが
それはたまきにとって、自分のためのケーキ。
渕上との打ち合わせは完璧だった。
連絡通り、15分遅れて店に乗り込む。
「すまん遅れた」
「おつかれー」
「おつー」
こうして「いつもの飲み会」を装う
3人の頭脳戦が幕を開けた。
私・渕上→たまきへのサプライズ
たまき→私へのサプライズ
という構図だ。
勝負が動いたのは、
1時間と数分が経過したタイミングだった。
たまきが席を外した。
視界から消えたのを確認すると
渕上は、私にあるものを渡す。
たまきへのメッセージカードである。
「早く!名前を書くんだ!」
私は紙片にたまきの名前とコメントを書きこんだ。
(http://u-note.me/note/47487213)
40秒後、たまきが戻ってきた。
(http://shiroikaze.blog1.fc2.com/blog-date-200802.html)
・・・勝ったぁ。
そしてこのタイミング、
ついに渕上がケーキに手をかける。
「えー、なんだかんだ言って、今日はるいの誕生日ということでね」
「えっ、なに」
「普段は冷酷な彼ですけども」
「えっ、何その前フリ」
リアクションをするのは主役の使命。
しかし、
ここまですべて計算通り。
「ハーピバースデー ディーア」
21時23分
ここで前に出る。
(http://nyaasokuvip.net/archives/5038)
「と見せかけて」
腹を抱えて笑う渕上。
事態が読み込めないたまき。
「24歳の誕生日にもなるとさ」
「」
「展開読めてくるじゃん」
「たしかに」
「というわけで」
渕上がケーキを反転させる。
そこには
たまきへの感謝のメッセージが書かれていた。
(http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1055055665)
「いつもありがとおおおおお」
「なんでぇえええ」
叫ぶたまき。
名前を書かれた人間はえてしてこうなる。
「渕上ぃ!さっき普通に私にケーキ見せてたじゃあんかぁ!」
「うん、ヒヤヒヤしたさ」
「意味わかんねえよおお」
渕上の計算だった。
あらかじめ祝われる本人にケーキを
見せることで、油断を誘う。
そして、
数分前にたまきが席を外したタイミング、
別の容器に入っていたチョコは
渕上の手できれいにセットされた。
さらに、
「いやね、ただケーキを送るだけじゃ
感謝は伝わりきらないと思うのよ」
「そうだな」
ここで
たまきへプレゼントを渡す。
「なんでぇええええ」
すべては打ち合わせ通り、
「あれ、プレゼントかぶった・・?」
同じ本を2冊、、、!
【12/2(水) 会の2日前】
(http://nebanebawh.blog75.fc2.com/blog-entry-1166.html)
「たまきにさ、プレゼントあげたら面白くね」
「いいね」
「何にするか」
「セクシュアルな自己啓発本とかどう」
「んーいいね」
「買いにいく時間あるかな」
「通販だと間に合うかわからんしなあ」
「別々のラッピングにしないと開ける時にバレるよな」
「そうなると、店で買うしかないか」
ひとつ、大きな問題があった。
いちおう社会人である我々がプレゼントを吟味し、
購入する十分な時間はなかったのだ。
しかし、
渕上が1日でやってくれた。
有給休暇をとったのである。
しかも、メモリアル休暇。
これにより
ケーキとプレゼントの準備、会場選び
すべてが完璧に進んだ 。
完全勝利、、、!
「誕生日なのに何なんや!」
しかし、ひとつ気になる点があった。
先ほどの
私に対する「はーーーーーーぴば」の段階で
たまきがプレゼント的な小袋を
持ち出したことを覚えていた。
(http://matome.naver.jp/odai/2139852539157279701/2139852781759547403)
彼らは王道パターンで
「主役向けのプレゼント」を買っていたのだ。
「ゆうてもね」
「一応るいの誕生日なわけで」
「プレゼント買ってあると」
「えっ」
サボテンをもらった。
「ベランダに置こう」
そう思った。
渕上はたまきとも組んでいたのだ。
私は祝われた。
ーーーよく考えたら、自分の誕生日だった。
裏をかくことに捕われすぎて、表が見えなくなっていた。
あやうく人間として肝心なことを忘れるところだった。
しかし、
これで終わりではない。
「渕上がたまきと組んで、
主役の自分に秘密で何かを準備してくる」
これも想定内だった。
「ゆうてもね」
「え、まだあんの」
「渕上にもいつもお世話になっているから」
準備していたのは
銘菓「かねすえ」さぬきわらび餅
喜んでくれた。
ちなみに、賞味期限は私の誕生日12/6だ。
これはキレイに締まった。
最高の幕切れである。
「いやー面白かったな」
「なんか疲れたな」
「って思うじゃん?」
不気味に笑うたまき。
完全に勝負は決していたかに見えたが、
カバンから何かを取り出した。
酔っぱらっているからなおさら怖い。
(http://myturn2ch.doorblog.jp/archives/45744251.html)
このタイミングということもあり、
もしウケ狙いのプレゼントならば
相当ハードルは上がっている。
なんてメンタルの強い奴だ。
(http://matome.naver.jp/odai/2132670272437107201)
白い手帳をくれた。
「計画通りぃい」
「お、ありがとう」
「誕生日こそ、普段一緒にいてくれる友人に感謝する」
*****【試した結果】*****
かなり疲れる。
そして騙し合いの泥仕合になると
オチが必要になる。
****************
今の私には、ひとつだけ懸念がある。
来月、渕上の誕生日なのである。
(「Tokyo案庵」第1回 終わり)